日本人に最適化されたSNPアレイを設計、約66万のSNP情報を搭載:医療技術ニュース
東北大学東北メディカル・メガバンク機構は、日本人に最適化されたSNP(一塩基多型)アレイ「ジャポニカアレイ」を設計した。約66万個のSNPから構成され、同等のSNP搭載のアレイに比べて精度が10%以上向上した。
東北大学は2015年6月24日、全ゲノム領域を網羅し、日本人の持つSNPを高精度で取得できる、日本人に最適化されたSNP(一塩基多型)アレイ「ジャポニカアレイ」の設計に成功したと発表した。同大東北メディカル・メガバンク機構(以下、ToMMo)ゲノム解析部門の長崎正朗教授、河合洋介講師らの研究によるもので、同月25日、英科学誌「Journal of Human Genetics」のオンライン版で公開された。
ジャポニカアレイは、東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査に協力した宮城県住民1070人分の全ゲノム情報を活用し、独自のSNP選択アルゴリズムを開発・実装してスーパーコンピュータ上で解析することで設計を実現。約64万のタグSNPと約2万の機能SNPを搭載し、遺伝子型インピュテーション技術により、約66万SNPから最大2000万のSNPの取得を可能にした。インピュテーションの精度は、同程度のSNPを搭載する既存のアレイに比べて10%以上向上し、3倍以上のSNPを搭載するアレイと同等、またはそれ以上の性能が達成できるという。
同研究は、日本人に固有な体質・疾患の関連遺伝子を大規模に探索研究するための基盤解析ツールとして、日本人の個別化予防・医療研究を進める上で重要な成果になるという。今後は、ToMMoで構築中の「全ゲノムリファレンスパネル」のサンプル数を増やすことで、アレル頻度の低いSNPについてもインピュテーション精度を上げ、さらに改善していく予定だ。
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