“技術だけ”で革新を考える日本、幅広い視野に立つ世界:製造マネジメント インタビュー(3/3 ページ)
製造業のデジタル化が加速している。さまざまな変化が進む中、モノづくりはどう変化していくだろうか。さまざまなシステムでモノづくりを支えてきたフランスDassault Systemesのエグゼクティブ バイスプレジデントでCSOであるモニカ・メンギニ氏に話を聞いた。
「日本政府は本当に分かっているのかな」と思う
MONOist これらの大きな変化の時代の中で、日本の製造業や取り組みについて、どう見ていますか。
メンギニ氏 日本には優れた技術を持った企業が多い。最近の景気の状況などもあり、その競争力も回復傾向にある。また日本政府が「ロボット新戦略※)」などを発表し、それを推進していく姿勢を表明していることにより、製造業のさらなる成長への期待感が高まっているように見える。
※)関連記事:「ロボット新戦略」が生産現場にもたらす革新とは?
テクノロジーによるイノベーションは日本が得意とするところであり、その動きそのものは評価すべきものだと考えるが、私は「本当にそれだけで日本企業が持続的な成長を行えるのか」と疑問に思っている。あまりにも方向性がテクノロジーに偏っているからだ。
テクノロジーだけで起こせるイノベーションは限定的なものだ。そして今世界で加速しているのは、テクノロジー以外のイノベーションである。製造業のビジネスを構成する要素としてテクノロジーは確かに重要だが、ビジネスモデルやサービス、マーケットなどの組み合わせで新しい“体験”を生み出すことは可能だ。「イノベーションは技術だけではない※)」ということに気付いているのか、ということを問いたい。
※)関連記事:その製品が売れないのは「良くないから」だ――一橋大学米倉教授
もちろん、テクノロジーによるイノベーションを指向する企業があってもいいが、国全体を支えるほどのイノベーションをテクノロジーだけで生み出し続けることは非常に難しい。ICTの進化で常に人々の体験に触れ続けることができるようになる“体験”を基軸にした経済では、優れた技術であっても、優れた“体験”に結び付けることができなければ意味がない。そういう意味では、イノベーションは技術者だけでなく、さまざまな役割の人々が生み出す可能性がある。
3Dエクスペリエンスプラットフォームは、こうした新たな“体験”経済時代のビジネス基盤として企画されたものだ。日本企業も、人々に革新的な価値をもたらすのが本当に技術だけなのか、ということは考える時期に来ていると思う。
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