“技術だけ”で革新を考える日本、幅広い視野に立つ世界:製造マネジメント インタビュー(2/3 ページ)
製造業のデジタル化が加速している。さまざまな変化が進む中、モノづくりはどう変化していくだろうか。さまざまなシステムでモノづくりを支えてきたフランスDassault Systemesのエグゼクティブ バイスプレジデントでCSOであるモニカ・メンギニ氏に話を聞いた。
製造革新を実現する「2つのレベル」
MONOist 製造業のデジタル化というのは、具体的にはどういう動きですか。
メンギニ氏 製造業のデジタル化は2つのレベルを考えなければならない。1つ目のレベルは、物理的な世界での生産のさらなる効率化を、ICTのシステムを使って実現するということだ。これはデジタル技術を活用して生産やオペレーション、成果の最適化をするもので、生産などを支援するICTソフトウェアだということができる。2つ目のレベルは、機械のプログラミングを行うレベルだ。マシンのデータを取得・分析し、最適制御する、IoTのレイヤーだ。
ダッソーは、この2つのレベルでユーザー企業の取り組みを支援している。1つ目のレベルでは、生産管理などのSCM(Supply Chain Management)システムや、MOM(Manufacturing Operations Management)システムなどを提供している。一方で、2つ目のレベルでも、IoT関連のソリューションを提供する。
プラットフォームで可視化する
MONOist 製造業のデジタル化の流れの中、ダッソーとしては具体的にはどのような強みを持つと考えていますか。
メンギニ氏 インダストリー4.0などを説明する時、多くのアナリストがさまざまなレイヤーでさまざまなシステムが稼働している状況を述べると思う。実際に、インダストリー4.0のように自律的に工場や製造機械が動くようなシステムでは、多くのシステムや機器が連携することが必要だ。工場の中にはさまざまな機器やシステムが、それぞれ異なる役割を果たしているからだ。インダストリー4.0などが議論される時には必ず「つながる」ということが問題になるのは、こういう点があるからだ。
この「つながらない」という状況において、われわれの3Dエクスペリエンス・プラットフォームが大きく貢献できると考えている。3Dエクスぺリエンス・プラットフォームは、3Dデータを基軸に、製品開発や生産、販売、マーケティングなど、製造業の一連のビジネスを支えるプラットフォームだ。同プラットフォーム上ではさまざまなアプリケーションおよびデータをシームレスに利用できることが特徴となる。多くのシステムからのデータを扱う時代に入る中、ビジネスを支えるプラットフォームが大きなカギを握る。
例えば、ダッソーでは、この3Dエクスペリエンス・プラットフォームを使って、街全体の形状データや、静的データや動的データ、各種情報などを表示できるようにする取り組みなどを進めている。街全体をバーチャル化する「3DEXPERIENCity」では、シンガポール国立研究財団(National Research Foundation、以下NRF)と「バーチャル・シンガポール」を共同開発することを発表した。
バーチャル・シンガポールでは、例えば、シンガポールのリッチなビジュアルモデルを使い、大規模シミュレーションなどを実施可能だ。都市化の影響をデジタル上で包括的に検証でき、物流やガバナンス、環境保護や防災、インフラ、防衛、コミュニティーサービスといった、都市に関わる各種のオペレーションを最適化するソリューションの開発にも役立つ。こういう街のようにさまざまなデータを包括的に1つのプラットフォーム上にまとめて、管理やシミュレーションが行える。
今後の製造革新で「つながる」世界が広がる中、こういう仕組みを既に完成させていることが強みになると考えている。
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