マイケル・ポーターが語る“つながるスマート製品”による第3次IT革命:LiveWorx 2015(4/4 ページ)
米国PTCおよび同社傘下のThingWorxは2015年5月4〜7日(現地時間)、米国マサチューセッツ州ボストンにおいてユーザーカンファレンス「LiveWorx 2015」を開催。IoTに関する新たな論文を公開した経済学者マイケル・ポーター氏が、IoTのもたらす変化について講演を行った。
IoTで成否を分ける「10の問いかけ」
ポーター氏は「スマートコネクテッドプロダクトが進展すれば、製品はもちろん、それに対応する企業の組織、業界の構造まで全て変化することになる。大規模な変化となるため、この流れに対応するには企業戦略を構築して取り組んでいかなければならない。当然ながらスマートコネクテッドプロダクトは企業にとって良い面を生み出す一方で、悪い影響をもたらす可能性もある。そう言う意味で企業は“10の問いかけ”に対して考えなければならないだろう」と話す。
ポーター氏が考える「10の問いかけ」とは以下の点だ。
- 機能や特性の中でどれを追求するか
- 製品に組み込むか、クラウドに置くか
- オープンか、クローズか
- 機能やインフラを内製すべきか、外注すべきか
- どういうデータを確保、分析するのか
- 製品データの使用とアクセス権の管理はどうするのか
- チャネルの“中抜き”をすべきか、しないべきか
- ビジネスモデルを変更すべきか
- データ販売ビジネスはありかなしか
- 事業範囲の拡大をすべきか
詳細については「IoTで勝ち残るために選ばないといけない“10のポイント”」で紹介しているが、ポーター氏は「これらの10個のポイントを考えることでIoTおよびスマートコネクテッドプロダクトについて戦略的に取り組みを進めることができるだろう。全ての問いかけは簡単に応えられるものではないが、企業としてはこれらに答えを持っていなければ成功するのは難しいだろう」と述べている。
IoTに必要な4つの新たな「役割」
これらのスマートコネクテッドプロダクトおよびIoTを企業の中で最適に運営していくためには「従来の製造業には存在しなかった新しい役割が必要になってくる。現段階でも4つの組織が必要になると見ている」とポーター氏は語る。ポーター氏が指摘する4つの組織とは、以下となる。
- データアナリティクス
- デザインコラボレーション
- DevOps
- カスタマーサクセスマネジメント
「データアナリティクス」については「データが膨大に得られるようになり、それを活用していくことを考えれば専門で担当する部門が必要になる。CDO(Chief Data Officer)などの役職も一部企業の中では生まれはじめている」とポーター氏は述べる。
「デザインコラボレーション」については、従来のメカニクス、エレクトロニクス、組み込みソフトなどの連携規模ではなく、開発組織として融合して製品を作り上げるような抜本的な改革が必要にあると主張する。また、「DevOps」についてもスマートコネクテッドプロダクトになれば、クラウド側に製品機能を持たせるなど、常に開発側が製品機能にアプローチできるため、顧客が利用している状況で新たな機能を開発するような新しいモノづくりが必要になるという。
「カスタマーサクセスマネジメント」は、売れば終わりの関係ではなく、製品が顧客に対し最適なパフォーマンスを提供できているかを検証し、できていなければ改善する部門のこと。スマートコネクテッドプロダクトであれば、従来にない新たなサービス体制が可能となるため、より積極的なカスタマーリレーションシップが必要になるという。
変化は既にはじまっている
ポーター氏は「こうした変化は既に企業によってははじまっている。GEのCEOであるジェフリー・イメルト(Jeffrey Immelt)氏は『GEは製造業だと考えていたがいつのまにかソフトウェアの企業になっていた』と語っている。企業としての存在を変える大きな変化がはじまっているのだ」と述べる。
スマートコネクテッドプロダクトやIoTの流れは、企業にとって大きなチャンスとなる。ポーター氏は「過去10年は企業にとって成長率も低迷し難しい時期だったが、IoTによる変革は大きなチャンスだ。IoTにより企業の生産性が高まり、コストが削減でき、製品に新しい価値を付加できる。大きな可能性が待っているのだ」とエールを送っている。
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