ZEV規制から読み解く環境対応自動車の攻防〔後編〕:知財コンサルタントが教える業界事情(20)(1/5 ページ)
米国のZEV(Zero Emission Vehicle:無公害車)規制に対する各企業の動向を知財を切り口に読み解く本稿。前編ではトヨタの燃料電池関連特許の無償開放とZEV規制との関連性を紹介しましたが、後編では自動車メーカー各社の動向をさらに掘り下げるとともに、水素インフラ関連企業の動向を取り上げます。
知的財産(知財)を通じて、業界動向を読み解く連載「知財コンサルタントが教える業界事情」ですが、前回から2回にわたり米国の(Zero Emission Vehicle:無公害車)規制に関連する自動車各社の取り組みを紹介しています。前編では、トヨタの燃料電池関連特許の無償開放とZEV規制との関連性を紹介しましたが、後編の今回は自動車メーカー各社の動向をさらに掘り下げるとともに、水素インフラ関連企業の動向を解説します。
トヨタの積極的選択 VS 日産の積極的静観
前編では、「なぜZEV規制によりトヨタ自動車(以下、トヨタ)が、燃料電池車(FCV)への積極策に出なければならなかったか」という点について解説しましたが、EV(Electric Vehicle:電気自動車)で、ZEVに関する規制対策を堅持できる日産自動車(以下、日産)との間には事業戦略面で、どのような差が現れるのでしょうか。
日産はカリフォルニア州などでのEV販売が好調であれば、ZEV対応はクリアできることになります。そのため、FCVについてはあえて対応を急ぐ必要はありません。EVにも、電池の重さと容量の関係や、充電に必要な時間の問題などがありますが、日産はFCVにも多くの課題を感じているようです(関連記事:燃料電池車の本格普及にはSiCインバータが必要だ)。そのため、トヨタの動き方と比べると大きな違いが生まれています。
「ミライ」を発売したトヨタは、ZEVに関する2018年からの規制対応策として、FCVに懸けたといえます。このことを考えると、トヨタは米国専用の大容量EVモデルをリリースするのではなく、FCV路線に舵を切ることを早い時期から考えていたといえるでしょう(図1)。
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