ZEV規制から読み解く環境対応自動車の攻防〔後編〕:知財コンサルタントが教える業界事情(20)(2/5 ページ)
米国のZEV(Zero Emission Vehicle:無公害車)規制に対する各企業の動向を知財を切り口に読み解く本稿。前編ではトヨタの燃料電池関連特許の無償開放とZEV規制との関連性を紹介しましたが、後編では自動車メーカー各社の動向をさらに掘り下げるとともに、水素インフラ関連企業の動向を取り上げます。
GMとホンダの動向
2013年に、GMとホンダはFCVで提携しています。そこで、ZEVに関する2018年規制に対し、GMとホンダは現在どのような取り組みを行っているかを、2015年2月のGM講演内容で確認してみたいと思います。
「SAE2015:Hybrid & Electric Vehicle Technologies Symposium」(2015年2月:ロサンゼルス)で、GMのAndrew Bosco氏(Chief Engineer for fuel cell engineering)が講演を行いました。この講演では、GMとホンダの協業は、ドイツ・米国(GM)・日本(ホンダ)の3拠点で取り組まれており、その狙いがコストの削減であることも紹介されています。
コスト削減が必要なもの
- 燃料電池スタック(Fuel Cell Stack)
- 発電設備以外の設備(Balance of Plant Components)
- 水素貯蔵システム(Hydrogen Storage System、HSS)
- 燃料電池パワーエレクトロニクス(Fuel Cell Power Electronics、FCPE)
- 電気けん引システム(Electric Traction System、ETS)
技術革新が必要なもの
- バッテリー(Regenerative ESS)
- 燃料電池パワーエレクトロニクス(Fuel Cell Power Electronics、FCPE)
- 電気けん引システム(Electric Traction System、ETS)
- ハイブリッド車および電気自動車部品の転用(Components from Hybrids and Battery-Electric Vehicle)
コストに占める各構成要素のうち、FCVに固有なものとして「燃料電池に用いる金属触媒」と「水素貯蔵タンクに求められるファイバー」があると指摘されています。燃料電池の金属触媒の使用量は80gから11gまで減少できているものの、1台のFCVには300の燃料電池セルを使用するため、1000台では30万セルが必要となります。つまりFCVの普及に向けて、伴い膨大な数量の燃料電池セルを生産しなくてはなりません※)。
※)「SAE2015 Hybrid & Electric Vehicle Technologies Symposium」(2015年2月:ロサンゼルス)
FCVにおける米国特許出願数1位はGM
2015年2月3日から開催された「水素先端世界フォーラム2015」(九州大学)では、GMジャパンのジョージ・ハンセン(George Hansen)氏(コミュニケーションズ/ R&Dサイエンスオフィス・ディレクター)が講演を行いました。同講演では、FCVの普及にはメーカー自身による開発・製造コスト削減努力に加え、行政の規制緩和や補助金、インフラ整備などが必要との指摘があったとされています。さらに、2002〜2012年までに「米国に出願された燃料電池関連の特許件数」が紹介されました(発表に基づき図2を作成)。それによると1位がGMで2位がホンダ、そして3位がトヨタでした(図2)。
※)「?」は特許件数記載がないため記入していない。また、特許の出願から公開までの期間は、原則として1.5年であるため、2015年2月の報告時点では2013年半ばまでの特許出願件数しか知ることはできず、出願年単位では2012年までが最新のデータとなっている。
2013年に、GMはホンダとのFCVの共同開発を発表しており、両社の連合で、トヨタFCV関連特許群に対抗できる特許件数を持ったことになります。そして日産とは異なり、GMとホンダもZEV規制対応策としてFCVを選択したことになります。
次に、欧州自動車メーカーの動向を紹介したいと思います。
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