たたき上げの開発担当取締役が目指す“BMWらしさ”とは:BMW 開発担当取締役 インタビュー(3/3 ページ)
2014年末にCEOと開発担当取締役の交代をほぼ同時期に発表したBMW。新任の開発担当取締役に就任したのは、トレーニー(研修生)からたたき上げのクラウス・フルーリッヒ氏だ。同氏が目指す“BMWらしさ”や、製品開発のモジュール化、トヨタ自動車との協業などについて、自動車ジャーナリストの川端由美氏が聞いた。
トヨタとの協業は「互いに尊敬できる関係」
最後にトヨタとの協業については、よい関係であることを強調した。
「トヨタ自動車のカウンターパートである内山田氏は熱いエンジニアであり、電動化やスポーツカーなどに強い興味を持っていらっしゃいます。トヨタ自動車とBMWでは経済的な規模は異なりますし、製品としての得意分野も異なります。BMWは従来、あまり他企業と協業してきませんでしたが、トヨタ自動車とは長期的な視点で協業できると考えています。具体的には、軽量化やバッテリーなどの先進技術において協業を進めています。ドイツと日本の文化は異なりますが、エンジニアのマインドは共通のものが多く、コンペティターではなく、互いに尊敬できる関係を構築しています」(フルーリッヒ氏)
水素を燃料とする車両開発では、燃料電池ではなく、水素をそのまま燃焼させる水素エンジンの研究に舵を切り、iシリーズを投入したとはいえトヨタ自動車と比べると電動化に関して幾分か立ち遅れた感のあったBMW。弁慶の泣きどころとも思えた燃料電池と電動化の分野で、基礎技術をトヨタ自動車とシェアできることは大きなアドバンテージにつながるだろう。一方で、トヨタ自動車側にとってなかなかヒットにつながらないスポーツカーの開発で、BMWから得るものがあれば新たな道が開ける可能性もある。
Dr.ではなく、Mr.の肩書を持ち、新人時代からBMWの技術屋としてたたき上げできたフルーリッヒ氏。今後、技術開発の視点から“BMWらしさ”を引き出す方向に導いていけるか、手腕を見守りたい。
筆者紹介
川端由美(かわばた ゆみ)
自動車ジャーナリスト/環境ジャーナリスト。大学院で工学を修めた後、エンジニアとして就職。その後、自動車雑誌の編集部員を経て、現在はフリーランスの自動車ジャーナリストに。自動車の環境問題と新技術を中心に、技術者、女性、ジャーナリストとしてハイブリッドな目線を生かしたリポートを展開。カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の他、国土交通省の独立行政法人評価委員会委員や環境省の有識者委員も務める。
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