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インタビュー

たたき上げの開発担当取締役が目指す“BMWらしさ”とはBMW 開発担当取締役 インタビュー(2/3 ページ)

2014年末にCEOと開発担当取締役の交代をほぼ同時期に発表したBMW。新任の開発担当取締役に就任したのは、トレーニー(研修生)からたたき上げのクラウス・フルーリッヒ氏だ。同氏が目指す“BMWらしさ”や、製品開発のモジュール化、トヨタ自動車との協業などについて、自動車ジャーナリストの川端由美氏が聞いた。

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「精密」で「適正」であることを目指す

 そうなるとがぜん気になるのが、フルーリッヒ氏の言う“BMWらしさ”の意味するところだ。

「応答性が良く、ダイレクトな操作性がBMWらしさを代表するキーワードでしょう。例えば、ステアリングホイールを握ったとき、その操作に対する応答が適正で、遅れがないといったフィーリングを得られることです。パワートレインでも同じことが言えます。言葉で表現すると、『精密(ファイン)』であったり『適正(プリサイズ)』であることを目指しています。言葉で“BMWらしさ”とは何かを解説するのは難しくても、クルマを運転した人々がそう感じられることが重要だと考えています」(フルーリッヒ氏)

 自動車のフィーリングとしては、教科書通りの正しい答えに思えるが、適性で精密な運転感覚を重要視するのと同時に、利便性や快適性を加えることでいろいろなクルマが生まれる。そのさじ加減がクルマづくりにおいて重要なのだろう。

「クルマづくりというのはとても複雑です。スポーティさでも、快適性でも、一筋縄では表現できません。例えば、電気自動車の『iシリーズ』において、環境性能やイノベーションを重視しつつも、退屈ではなくエモーショナルなクルマに仕上げています。そもそもBMWは、本社がシリンダーの形をした会社ですから、伝統的な顧客にとって、モーターで走るiシリーズは意外な製品だったに違いありません。その考えを言葉で覆すのは難しかったとしても、いざ『i3』を運転したときに、やっぱりBMWが作ったクルマだと感じていただけることが重要なのです。自動車そのものが解説してくれるのですから、たくさんの言葉で飾る必要はないのです」(フルーリッヒ氏)

電気自動車の「i3」にも“BMWらしさ”がある
電気自動車の「i3」にも“BMWらしさ”がある(クリックで拡大) 出典:BMW

内燃機関は1気筒当たり500ccで3/4/6気筒持つモジュラー設計へ

 現行モデルに関して、基本の構造を基に応用することで幅広い製品ラインアップを構築するという考え方は分かったが、将来の技術開発に関しても、ITから燃料電池まで幅広い対応が求められる時代になっている。

「次の20年間で、従来の内燃機関の高効率化に加えて、プラグインハイブリッド化が進み、燃料電池車も少しずつですが走り出すでしょう。内燃機関は、現行の7機種を1つのエンジンファミリーに集約し、1気筒当たり500ccで3/4/6気筒持つモジュラー設計にします。リチウムイオン電池については、電気自動車やプラグインハイブリッド車の性能に関わることもあって、中長期的なリサーチをトヨタ自動車との協業の中で行っていきます」(フルーリッヒ氏)

「燃料電池車の開発は、プラグインハイブリッド車の延長にあると位置付けて研究開発のリソースをトヨタ自動車と共有しています。特に、基礎研究の分野は共有できる点が多いと考えています。自動運転やコネクテッドカーの分野に関しては、特にセンサー技術においてメガサプライヤの強みを生かしつつ、それらの技術をいち早く製品へ応用していきます。トヨタ自動車との基礎研究の協業やサプライヤからの技術提供を受ける一方で、コアコンピタンスとなるパワートレインやプロダクトへの応用といった部分では、わが社で独自に行っていきますから、BMWらしさという個性を失うことは決してありません」(同氏)

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