連載
燃料電池スタックのさらなるコスト削減に取り組む日産:燃料電池車ビッグ3 講演リポート(3)(3/3 ページ)
ついに量産販売が始まった燃料電池車。普及の端緒についたとはいえ、課題はまだまだ多い。「第11回 国際 水素・燃料電池展(FC EXPO 2015)」の専門技術セミナーに、燃料電池車を手掛ける国内大手自動車メーカー3社の担当者が登壇。本連載では、その講演内容をリポートする。第3回は日産自動車の森春仁氏による講演だ。
適切に管理をすれば安全な水素
森氏は、燃料電池車の本格普及に向けての課題として、
- さらなる低コスト化
- 水素インフラの構築
- 高圧水素の安全性の社会的認知
を挙げている。
燃料電池車の「さらなる低コスト化」は先述した取り組みで進めるが、「水素インフラの構築」や「高圧水素の安全性の社会的認知」は日産自動車1社で対応できる課題ではない。
「水素インフラの構築」では、ユーザーにとって利便性が高まるように水素ステーションの数とそのロケーションなどが特に重要になる。世界各国で水素ステーションの建設計画が発表されており、日本でも2015年に最大100カ所の建設が予定されている。また、水素の価格も普及、拡大に向けて重要なファクターになる。経済産業省が示すロードマップでは、ハイブリッド車と同等のランニングコストを目指すとしており、既に稼働している水素ステーションでは1kg当たり1000〜1100円で水素を充てんできるという。
「高圧水素の安全性の社会的認知」については、適切に管理をすれば安全なエネルギーであることを強調した。「水素は、分子量が空気の14分の1と軽いため拡散性が高く、漏れてもすぐに薄まる。また燃えた場合に発生する輻射熱も、都市ガスの4分の1と小さい」(森氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ≫連載「燃料電池車ビッグ3 講演リポート」
- 燃料電池車の本格普及にはSiCインバータが必要だ
CO2を排出しない次世代環境対応車としてだけでなく、今後の発展が期待される水素エネルギー社会のけん引役としても期待されている燃料電池車。日産自動車は、その燃料電池車の市場投入を表明している自動車メーカーの1つである。そこで、同社で燃料電池車の研究開発を担当する飯山明裕氏に、燃料電池車の本格普及に向けた課題などについて聞いた。 - 「量産の準備は整っている」、日産が燃料電池車「TeRRA」を発表
日産自動車は、「パリモーターショー 2012」において、燃料電池車のコンセプトカー「TeRRA(テラ)」を公開すると発表した。同社が、燃料電池車の新モデルを発表するのは、2005年12月の「X-TRAIL FCV」以来、約7年ぶり。 - 日産、ダイムラー、フォードが燃料電池車開発で協業、2017年に量産へ
日産自動車、Daimler(ダイムラー)、Ford Motor(フォード)の3社は、究極のエコカーとして知られる燃料電池車の開発を加速させるために協業すると発表した。市場が受け入れ可能な燃料電池車を2017年に量産することが目標。 - トヨタ日産ホンダが水素ステーション整備で合意、運営費用を一部負担へ
トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの3社は、燃料電池車の燃料である水素ガスを供給する水素ステーションの整備促進に向けた支援策を検討し、共同で取り組むことに合意したと発表した。