燃料電池スタックのさらなるコスト削減に取り組む日産:燃料電池車ビッグ3 講演リポート(3)(2/3 ページ)
ついに量産販売が始まった燃料電池車。普及の端緒についたとはいえ、課題はまだまだ多い。「第11回 国際 水素・燃料電池展(FC EXPO 2015)」の専門技術セミナーに、燃料電池車を手掛ける国内大手自動車メーカー3社の担当者が登壇。本連載では、その講演内容をリポートする。第3回は日産自動車の森春仁氏による講演だ。
白金とニッケルの合金で触媒活性が5〜25倍に
燃料電池車の最大の課題はやはりコストだ。森氏は、「当初数億円といわれていたものが、数千万円、数百万円と削減されてきている。しかし、これをもっと普通のガソリン車並みに下げていかないと、燃料電池車はユーザーから求められない。そのためにはシステムの簡素化や、市場規模を確保して安価にする施策を進めていかなければならない」と述べる。
コスト削減のためには、希少な材料と複雑な構造のために高コストだった燃料電池車特有のシステムを、技術の革新と量産効果で手ごろな価格に下げる必要がある。特に、燃料電池システムコストの半分程度を占めるとみられる燃料電池スタック本体と、周辺補機部品のコスト低減がより重要になるという。燃料電池スタックスタック本体では、希少金属の白金の使用量の削減を進めており、そのためにスタックの小型化(高出力密度化)を図っている。
高出力密度化のポイントとして挙げているのが触媒の高活性化と物質輸送抵抗の低減だ。森氏は触媒の高活性化について、「白金と他の金属を混ぜ合わせることでその使用量を減らす。さらに、ただ混ぜるだけではなくてきちんと白金を配列できるような温度制御や処理が大切になる。これによって活性が数倍進むということが分かってきている」と指摘する。例えば、白金とニッケルの合金の粒を箱状につなぐと活性が5〜25倍になるという実験結果もあるようだ。また、このような高い活性が継続されることも大きなポイントになるとしている。
燃料電池車を500km走行させるには約5kgの水素が必要だといわれているが、5kgの水素は大気圧の状態だと大変な容積になってしまう。燃料電池車に載せるには、水素タンクに高圧で圧縮して入れておくことになる。35MPaや70MPaと極めて高圧になる水素タンクには、高価な炭素繊維強化樹脂で製造されている。日産自動車は、炭素繊維強化樹脂を削減することで、水素タンクのコスト削減にも取り組んでいるという。
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