RPGをクリアするまでのプロセスと生産管理:RPGで理解する生産管理(1)(4/4 ページ)
“モノを生産する”製造業にとって、生産を上手に管理し運営していく「生産管理」の手法は、非常に重要です。しかしさまざまな要素や考え方が含まれる「生産管理」は、慣れない人々にとっては理解するのが難しいものでもあります。そこで本連載では、RPG(ロールプレイングゲーム)になぞらえて生産管理を分かりやすく解説していきます。
「ボトルネック」のポイント
ボトルネックとは、制約条件となります。著書「ザ・ゴール」で有名な、エリヤフ・ゴールドラット氏が自ら開発・販売していた生産スケジューリングソフトは、それを導入した多くの企業の生産性を大幅に改善し、生産リードタイムを劇的に短縮したといいます。その理論をベースに築かれたものが、「TOC(制約条件の理論)」です。TOCでは以下の5つの改善ステップを紹介しています。
- 制約条件(ボトルネック)を見つける
- 制約条件(ボトルネック)を徹底活用する
- 制約条件(ボトルネック)以外を制約条件(ボトルネック)に従わせる
- 制約条件(ボトルネック)を強化する
- 惰性に注意しながら、これらの作業を繰り返す
マネジメントの基本「PDCAサイクル」
ゲームクリアという大きな目標と短期的な目標は、ゲームを進めていく中では異なってきます。しかし、短期的な問題解決に取り組んでいるうちに、強かった魔物と戦えるレベルになり、問題を1つずつ解決していくことが可能になります。その結果、次の目的地を教えてもらえたり、関所が開いたりして、最終ゴールに一歩ずつ着実に近づけるのです。
これは生産管理にも当てはまります。経営戦略から落とし込まれる部門戦略達成に向け工場などでは業務に取り組むが、そこでは日々さまざま問題が生じ、その短期的解決が求められます。これらの問題に対して、1つずつ計画を立てて、実行して、検証して、改善していかなければなりません。そして再び計画へと戻り、サイクルを繰り返していくことになります。
計画(Plan)- 実行(Do)- 検証(Check)- 改善(Action)
さまざまな取り組みに対して、計画を立てて実行しても、そのままでは意味がありません。必ず数値で効果測定を行い、見直して改善していく必要があります。そのための基本的な考え方が、次の4段階の頭文字をつなげた、「PDCAサイクル」です。PDCAサイクル実施のポイントは、数値目標を持たせて評価をすることと、サイクルを何度も回すことです。
- 「計画(Plan)」とは、過去の実績や将来予測などをもとに、将来の目標やロードマップを作成すること(数値目標を設定する)
- 「実行(Do)」とは、計画を実行すること
- 「検証(Check)」とは、実行内容が計画に合致しているか確認すること(数値目標で検証する)
- 「改善(Action)」とは、実行内容と計画のギャップを洗い出し、改善策を講じること
このサイクルを1度回転させたら、さらに次の計画へとつなげ、継続的な改善活動を通じて、成果を高めていくということが重要になります。
まとめ
今回はRPGのさまざまな場面を例に、生産管理の基本的なベースとなる考えや取り組みを紹介しました。「生産管理とは何か」を一言でいうと「生産管理とは、QCDを効率的に生み出すために、3MをPDCAを回して運用すること」だということができます。
「3M」とは「人的労力(Man)」「機械設備(Machine)」「材料(Material)」のことで、生産活動に必要なリソースと言い換えられます。これらを活用して、QCDを実現することが目標となります。つまり、市場から求められる「品質とコストと納期」で生産するために、「計画して、実行して、評価して、改善していく」サイクルを繰り返すことが生産管理だといえるでしょう。
RPGに置き換えてみれば「仲間」「武器や防具」「アイテム」を活用して、確かな能力で効率的にラスボスを倒して世界の平和を取り戻すことだといえるかもしれません。そのためには日々の作業において「全員レベル10まで上げよう」や「強い武器を購入しよう」など、小さなPDCAサイクルを回転させ、仲間を強化していくことが必要だといえます。もし、次にRPGをプレイする機会があるならば、3ムやPDCAの意識を持ってプレイしてもらえると、生産管理についてもより理解が深まるかもしれません。
次回は?
今回はRPGをベースに生産管理の基本を紹介しましたが、第2回では、RPGクリアに欠かせないアイテムの管理と在庫管理について紹介します。生産管理の基本となる「5S」「目で見る管理」を紹介し、「品質管理」から「在庫管理」「発注方法」について見ていきます。(次回へ続く)
筆者プロフィル
山口 亨(やまぐち すすむ) UTAGE総研 代表取締役 中小企業診断士
愛知県一宮市出身。中小企業診断士として、東京商工会議所を中心に、日々中小企業の経営改善現場で活躍。特に無料ツールを活用した、ITインフラ構築や販売促進支援と創業時などの思いを事業計画書という形に作り上げる支援に定評がある。また、著書に「ガンダムに学ぶ経営学」「ドラクエができれば経営がわかる」がある。
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