製造の未来を切り開くロボットセルの価値と課題:ロボットセル(4/4 ページ)
ロボットが多能熟練工になる!? ――。装置型産業における生産の自動化が進む一方、人手による作業が多かった組み立て生産領域の自動化が急速に進もうとしている。そのキーワードとなっているのが「ロボットセル」だ。ロボットがセル生産を行う「ロボットセル」はどのような価値をもたらし、どのような課題を残しているのか。日本ロボット学会会長の小平紀生氏が解説する。
製造業の日本的強さを求めて
2000年代前半は新興工業国の人手に対して日本は自動化で対抗してきました。また2005年前後からは新興工業国が機械化し、ライン生産を行うようになりました。それに対して日本は自動化を組み合わせたセル生産で、一歩ずつ先を行くことができていました。しかし最近では、新興工業国のロボットの商談でも当然のようにセル生産が話題になっています。
こうなると日本の製造業の次の一手は何になるのでしょうか。「同じような方法でそこそこのパフォーマンスを出す」というのは、たとえ見よう見まねであってもパワーがあればできてしまいます。しかし「同じような方法や設備なのになぜか有意差がある」というような暗黙知で実現している世界は、見よう見まねではまねできません。このようなごくアナログ的な差異は強固な競争力になると思います(関連記事:「まねできる技術は守っても無駄、教えてしまえ」日本ロボット学会小平会長)。
日本では、たとえ同じ製品を作り続ける生産設備でも、立ち上げ当初の状態のまま何年も使用することはまずありません。“隘路工程の改善”や“チョコ停対策”によって生産性を上げたり、品質傾向やトラブル情報をもとに歩留まり改善活動を行ったり、改善努力は生産設備が不要になるまで続きます。
このあたりの形にならないノウハウに、地味ながら日本の製造業の底力があると思います。このような改善活動に対しても手の入れやすさ、ちょっとしたチャレンジのしやすさという設備の柔軟性を作り込むことは、日本的強さに直結します。形としてのセル方式の追求だけではなく、ロボットによるセル生産の日本的強さを極めることは、日本の製造業にとって意義あるものになると考えています。
ロボット開発の最前線
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