スズキのガソリンエンジン開発目標は平均熱効率で40%、2020年初頭に達成へ:エコカー技術(1/2 ページ)
軽自動車や小型車でクラストップの燃費を総なめにしているスズキ。現状に満足することなく、さらなる燃費向上を図る同社は、次世代軽量プラットフォームの導入やガソリンエンジンの平均熱効率40%の達成、「エネチャージ」の進化版「エネチャージII」と言えるハイブリッドシステムの開発に取り組んでいる。
スズキは2014年4月16日、東京都内で会見を開き、四輪車における環境技術への取り組みについて説明した。
同社は、全てのタイプの軽自動車(ハイトワゴン、スーパーハイトワゴン含む)で、ストップのJC08モード燃費を達成している。「アルト エコ」は、ハイブリッド車や電気自動車を除く内燃機関車でトップとなる35.0km/lを達成。「ワゴンR」は、ライバルの「DAYZ/eK」と「ムーヴ」を上回る30.0km/lとなり、軽ハイトワゴンでトップに立った。軽スーパーハイトワゴンの「スペーシア」は29.0km/lで、後発の「タント」や「DAYZ ROOX/eKスペース」に抜かれていない。
また、新開発の「デュアルジェット エンジン」を搭載する小型車「スイフト」も、排気量1.2l以上のガソリンエンジン車のJC08モード燃費でトップとなる26.4km/lを達成している。
このようにクラストップの燃費を実現している同社だが、四輪車のさらなる燃費の向上のために研究開発を加速させている。今回の会見で取り上げたテーマは、次世代軽量プラットフォームとパワートレイン開発、ハイブリッドシステムの3つ。これらを順に説明していこう。
15%の軽量化と30%の剛性向上を両立
次世代軽量プラットフォームは、プラットフォームの統合、機能部品のモジュール化、骨格構造の革新による軽量化によって実現する計画だ。
現在、スズキの車両プラットフォームには、軽自動車向けの「K」と、排気量1.0lエンジンを搭載する「ソリオ」など向けの「A」、スイフトなど向けの「B」、「SX4」向けの「C」の4種類がある。これらは、Kを除いて、欧州における車両サイズを表すセグメント表記に対応している。次世代軽量プラットフォームでは、KとAはそのまま継続するものの、CはBに統合する。
機能部品のモジュール化は、Volkswagen(フォルクスワーゲン)グループの「MQB」やトヨタ自動車の「TNGA」、ルノー・日産アライアンスの「CMF」などに近い考え方だ。スズキでは、モジュール化の対象とする部品をサスペンション、空調システム、フロントシートフレームなどに絞った。4種類のサスペンション、2種類の空調システム、3種類のフロントシートフレームを、K/A/Bの各プラットフォームを越えて共用化する。
燃費向上に最も寄与する軽量化では、主要構造や部品配置を全面刷新する。衝突性能や剛性、強度、NVH(Noise、Vibration、Harshness:騒音/振動/ハーシュネス)を向上しながら、車両全体で最大15%の軽量化も果たす。
軽量化のための手法は2つある。1つは、滑らかな形状による力の分散である。現行の車両プラットフォームでは、角張った形状の部分に集中する応力による変形を防ぐための補強を行っている。滑らかな形状にすると補強が不要になるとともに、部材の板厚を薄くすることもできる。もう1つは連続断面だ。現行の車両プラットフォームは、骨格構造が途中で分断される箇所があり、衝突時の力を全体に逃がしにくくなっている。次世代軽量プラットフォームでは、骨格構造に連続性を持たせて少ない部材でも剛性を確保できるようにする。
2つの手法により最大15%の軽量化が可能になるが、剛性についても、曲げ剛性、ねじり剛性とも30%向上するという。
「平均熱効率40%」という高い目標
パワートレイン開発は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、トランスミッションのそれぞれで野心的な取り組みを進めている。
ガソリンエンジン開発の目標は、JC08モードの平均熱効率を、2020年初頭までに40%まで高めることである。現在、同社のガソリンエンジンの平均熱効率は33〜34%だが、約6年で40%を達成するという目標はかなり難しい。トヨタ自動車が2014年4月に発表した「高熱効率・低燃費エンジン群」が達成した38%という数字は「最大熱効率」であり、スズキが目標値とするJC08モードの平均熱効率とは異なる。JC08モードの平均熱効率で40%というのは、最大熱効率であれば40数%となり、トヨタ自動車が次世代のハイブリッド車専用エンジンで達成をもくろむ数値とほぼ同等と考えてよい。
スズキはこの目標を高圧縮比化で達成する方針である。現在、スズキのエンジンの圧縮比は、アルト エコの排気量660ccエンジンが11.2、ソリオとスイフトの排気量1.2lのデュアルジェット エンジンが12.0となっている。
これらを基に、微粒化噴霧、噴霧直入率の向上といった燃料噴霧技術、タンブル向上や乱れ制御といったエンジン気筒内流動技術、点火エネルギーの強化による点火技術を導入し段階的に圧縮比を向上させる。また、デュアルジェット エンジンから採用しているクールドEGRをさらに進展させるなどして損失の低減にも努める。
車両プラットフォームの統合に合わせて、エンジン開発の集約も進める。軽自動車用エンジンはアルト エコやワゴンRに採用している「R06A」に統合する。小型車向けエンジンは排気量1.4l以下に集中し、ベースエンジンを共通としながら、自然吸気とともに直噴/過給機付きもラインアップする。
スズキはこれまで、ディーゼルエンジンはFiat(フィアット)グループからOEM供給を受けていたが、インドを中心とする新興国市場向けを念頭に自社開発を行う。現在開発しているのは排気量800ccの2気筒エンジンである。「1年以内に顧客の手元に届けたい」(スズキ)としており、市場投入は間近のようだ。
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