路面電車と自動車が700MHz帯の相互通信で衝突防止、マツダなどが実証実験:これがホントの路車間通信
マツダと東京大学生産技術研究所、広島電鉄、交通安全環境研究所の4者は、路面電車と自動車の間で700MHz帯を使った相互通信を行うことにより、衝突事故を防止できる安全システムの実証実験を始める。
マツダは2013年9月3日、先進の運転支援システムを搭載する「マツダ アテンザ ASV(Advanced Safety Vehicle)-5」を開発したと発表した。東京大学生産技術研究所、広島電鉄、交通安全環境研究所とともに、アテンザ ASV-5を用いて、ITS(高度道路情報システム)を活用した安全システムの公道実証実験を、同年9月から広島市内で開始する。また、「第20回ITS世界会議東京2013」のポストコングレスツアー(2013年10月20、21日)において、広島電鉄の路面電車とアテンザ ASV-5の間で、700MHz帯を使った相互通信を行い、衝突事故を防止するシステムのデモンストレーションを行う。
2012年11月発表の「アテンザ」は、運転支援システム「i-ACTIVSENSE」のセンサーとしてレーザーレーダー、77GHz帯と24GHz帯のミリ波レーダー、車載カメラを1個ずつ搭載している(関連記事:3種類のレーダーとカメラで9つの安全機能を実現、マツダの「i-ACTIVSENSE」)。アテンザ ASV-5は、さらにレーダーや車載カメラの数を増やして検知性能を高めた。また、地上アナログテレビ放送の停波によって、ITSの車車間通信に利用できるようになった、700MHz帯の専用周波数(中心周波数760MHz、バンド幅10MHz)に対応する車載通信機を搭載している。
広島市内の公道実証実験では、アテンザ ASV-5の車載センサーを用いた運転支援システムと、同車両と広島電鉄の路面電車に搭載する700MHz帯の車載通信機を使った相互通信を組み合わせて、見通し不良の状況で自動車が路面電車と衝突してしまうような事故の防止に取り組む。
公共交通車両に700MHz帯の車載通信機を優先的に配備
現在、レーザーレーダーやミリ波レーダー、車載カメラなどを用いた運転支援システムの普及が加速度的に進んでいる。しかし、車両に搭載するセンサーで周辺を自律的に検知するこれらの運転支援システムでは、数m〜数十mという直近のエリアしかカバーできない。
これに対して、車両の位置や状況を車両間で相互にやりとりする車車間通信を使えば、より広い範囲で安全を実現できるようになる。特に、700MHz帯を用いた通信であれば、100m程度の通信距離や、障害物のある曲がり角を回り込んで通信できる電波の高い回折性などにより、交通安全を高いレベルで実現できると言われている。しかしながら、各車両に車載通信機を搭載する必要があるため、700MHz帯の車車間通信を用いた安全システムは実用化には至っていない。
東京大学生産技術研究所附属モビリティ先進研究センターは、公共交通車両に700MHz帯の車載通信機を優先的に配備することで、車載通信機の普及とサービス浸透の課題を解決できると想定している。特に、道路上で自動車と並走する路面電車であれば、車車間通信による安全システムの需要は大きい。そこで、1日平均で約15万人が路面電車を利用する広島市において、路面電車−自動車間通信による公道実証実験を行うことになった。
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