「日本のITS技術を東京から世界に発信」、自動運転や交通ビッグデータもテーマ:ITS世界会議
「Open ITS to the Next」をテーマとして、2013年10月14〜18日に開催される「第20回ITS世界会議東京2013」。東京都をはじめ日本各地で取り組んできた官民連携によるITS実証実験の成果などを通じて、ITSに関する日本の技術力を全世界に発信していく。ITS技術を一般にも広く知ってもらうために市民参加型のイベントも企画している。
「第20回ITS世界会議東京2013」(以下、東京会議)の日本組織委員会は2013年6月12日、同年10月14〜18日に開催する同会議の概要を発表した。「Open ITS to the Next」がテーマの東京会議では、東京都をはじめ日本各地で取り組んできた官民連携によるITS(高度道路交通システム)の実証実験の成果などを通じて、ITSに関する日本の技術力を全世界に発信していく。また、ITS技術を一般にも広く知ってもらうために、会期中は市民参加型のイベントも企画している。同会議の公式WEBサイトも公開した。
東京会議の日本組織委員会委員長を務める渡邊浩之氏は、同会議で注目されるキーワードとして「ITS Green Safety」と「高度運転支援・自動運転」を挙げた。ITSでは、「事故ゼロ社会」、「渋滞解消」、「環境対策」(エネルギーの有効活用など)などを目指した取り組みを行っている。こうした中で、ITS Green Safetyは、「世界一グリーンで安全な道路交通社会の実現」を目指して、日本の官民が協力して取り組んでいる活動の1つである。高度運転支援・自動運転では、高齢化社会にも対応できる、機械が人に合わせる「優しい自動車社会」の実現を目指している。
東京会議では、ITS Green Safetyの事例として、センシング技術や予測技術、情報提示手段などを活用して実現した5つのサービスを紹介する予定だ。その5つとは「次世代DSSS」(関連記事:広がるITSの輪、DSSSレベルIIへの対応で事故発生を抑制へ)、「通信利用型先進安全自動車」、「高速道路サグ部の交通円滑化サービス」、「ITSスポットサービス」および「モバイル通信とITSスポットの協調サービス」である。
ITS Green Safety以外でも、「交通事故/渋滞ゼロを目指す」事例として、「コミュニティ・ゾーンにおける安全支援」(アイシングループ)や「高速道路における高度運転支援技術」(トヨタ自動車)など、5つのアプリケーションが紹介される予定だ。
他方、高度運転支援・自動運転に関してはこれまで、車両に組み込まれる「自律型」と、路車間や車車間で情報の受発信を行う「協調型」の両面から技術開発が行われてきた。高度運転支援・自動運転はこれらの技術を統合することによって実現可能となる。渡邊氏は、「これらの技術の延長線上に高度運転支援・自動運転の領域はある」と話す。
高度運転支援・自動運転の事例として東京会議では、「エネルギーITS自動運転隊列走行システム」の実証成果を公開する。このシステムは、時速80kmで走行するトラック4台が車間距離4mで隊列走行するもので、安全性に加え、CO2排出量の削減や省エネルギーの効果が得られるといわれている(関連記事:203X年のトラックは自動運転が主流に!? 「世界トップレベル」の技術に迫る)。
ITSビッグデータの活用、世界規模で検討開始
2011年3月の東日本大震災時は、走行中の車両から送られてくるプローブ情報を基に、民間データと公共データを統合し、被災地における通行止め情報などを公開した(関連記事:「平常時の取り組みが災害時に役立つ」、通行実績情報マップの成果と課題が示唆)。この対応は地域への迅速な情報提供やCO2排出量の可視化、災害への速やかな対応などを行う上で大きく貢献した。東京会議ではこれを機に、民間データや民間サービス、公共データなどを共通基盤上に統合し、災害時に限らず平常時にも活用できる仕組み作りについて、世界規模で議論を始める考えである。
東京会議ではこの他、欧州、アジア、米国のITS関連3団体(ERTICO、ITS Asia-Pacific、ITS America)の連携企画として、高度運転支援・自動運転の共同デモ、ITSリーダーによるトークショーなどを予定している。また、日本を代表する展示会「CEATEC JAPAN 2013」(2013年10月1〜5日)と「東京モーターショー2013」(2013年11月22日〜12月1日)との連動イベントやシンポジウム、東京会議会場での市民公開ステージイベントなどを実施する計画である。
東京会議は2013年10月14日に東京国際フォーラムで開会式が行われ、同月15〜18日は東京ビッグサイトで会議や展示会などが行われる。主催者によると、東京会議には60以上の国から8000人以上が参加すると見込まれている。会議では約800件の論文が発表される予定だ。
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