検索
特集

203X年のトラックは自動運転が主流に!? 「世界トップレベル」の技術に迫る安全システム(1/3 ページ)

産総研のつくば北サイトで、大型トラックの燃費向上やドライバーの運転負荷軽減などを目的とした、自動運転・隊列走行技術の実証実験が行われた。研究開発を統括するNEDOの理事長を務める古川一夫氏が「世界トップレベル」と自負するその技術をリポートする。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
トラックの自動運転・隊列走行の様子

 2013年2月25日、茨城県つくば市にある産業技術総合研究所(産総研)つくば北サイトの試走路において、トラックの自動運転・隊列走行に向けた研究開発の成果発表会が開催された。この研究開発は、省エネルギー効果の高いITS(高度道路情報システム)の実現を目的として、トラックの自動運転・隊列走行に必要な要素技術や、国際的に信頼されるCO2削減効果の確立を目指して実施されたものだ。

トラックの自動運転・隊列走行の様子
トラックの自動運転・隊列走行の様子。写真の奥に見えるのは筑波山である。(クリックで拡大)

1950年代から始まった自動運転研究

 研究開発を統括した新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の理事長を務める古川一夫氏によると、自動車の自動走行の研究は、1950年代に吹雪の中の発生した事故を受けて米国で始まり、日本でもすぐ追いかける形で始まったという。1980年代には、当時の建設省が第二東名で自動走行を実現させようという「AHS(Advanced Cruise-Assist Highway Systems)構想」を立ち上げている。温室効果ガスの排出量増大が問題視される中で、日本が排出するCO2の20%が自動車由来ということもあり、2000年代に入って、省エネルギーの視点でITSを捉えようという機運が高まり、今回の「自動運転・隊列走行に向けた研究開発」につながった。

 2008年度から5年間に渡り行われた研究のテーマは2つ。トラックの自動運転・隊列走行を効率よく行うための要素技術開発と、CO2排出量を減らすためのシミュレーション技術だ。これをNEDOと日本自動車研究所(JARI)、7つの大学(東京大学、日本大学、神戸大学、慶應義塾大学、弘前大学、金沢大学、東京工業大学)、10の企業(いすゞ自動車、日野自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックス、大同信号、三菱電機、日産自動車、デンソー、NEC、沖電気工業)が参加して、約44億円をかけて取り組んだ。

 「世界トップレベルだと自信を持って言える」と胸を張る古川理事長が、次のポイントとするのが実用化だ。今後は大学や企業の研究部門だけでなく、実際にトラックの自動運転・隊列走行技術を利用する自動車業界や物流業界に対するアプリケーションのフェーズに入る。できるだけ早くこれを進めて、「世界で初めて自動運転・隊列走行を実用化し、CO2排出量のさらなる削減を目指したい」(古川氏)という。

世界的にも難度の高い条件下での自動運転・隊列走行

 研究開発された技術は多岐にわたっているが、まずはその成果を動画でご覧いただきたい。

【動画1】時速80km/車間距離4mで隊列走行している(先頭車両を含めて自動運転)。場所は産総研のつくば北サイト試走路で、1周3.2kmのオーバルコースである。(クリックすると再生)
【動画2】時速80km/車間距離4mで隊列走行しているところから、先頭車両がブレーキをかけて急減速し停止する。減速中でも車間距離にはほとんど変化がないことに注目されたい。(クリックすると再生)

 報道陣に最初に公開されたのが上の映像にあるデモンストレーションだ。大型トラック3台と小型トラック1台が、時速80km/車間距離4mで隊列走行している。ドライバーは乗っているものの、4台とも今回開発されたシステムによる自動運転だ。大型と小型のトラックが混在するという、運転・制御特性が異なる車両で隊列を組む「世界的にも非常に難度が高い条件」(NEDO)での成果である。大型トラック3台は日野自動車の「プロフィア」、小型トラックはいすゞ自動車の「エルフ」だ。

 これらの実験車両(以下、隊列実験車)には4つの技術が搭載されている。1つ目は、一般車両が走行している中でも、車群を組める車両を見つけて隊列を形成する「隊列形成機能」である。2つ目は、車車間通信によって車間距離を狭めながら安全に制御する「車間距離制御機能」。3つ目になるのが、4mの車間距離を維持するという、人間の限界を超えた状況で、道路端の白線を認識して車両の操舵を自動制御する「車線保持機能」だ。そして4つ目は、車群の先頭車両のドライバーが障害物などを発見した際に運転操作を行ってしまい、全体の車群が崩れて省エネルギー効果が下がる事態を避けるための「衝突回避機能」である。

左の図は、隊列走行の実用化に向けたロードマップである。2020年までのX、2020〜2030年のY、2030年以降のZという3段階の実用化コンセプトが想定されている。右の図は、隊列実験車に搭載されている4つの技術を示している。X、Y、Zの各コンセプトで4つの技術がどのように利用されるかも想定されている。(クリックで拡大) 出典:JARI

 研究開発は、X、Y、Zという3段階の実用化コンセプトを念頭に進められている。今回発表した自動運転・隊列走行技術は、高速道路に専用レーンを用意して時速80km/車間距離4mで走行する、実用化時期として2030年代以降を想定するコンセプトZのための技術である。

 なお、コンセプトYは2020〜2030年が実用化目標で、一般車両が混在する高速道路を高度の運転支援機能(部分自動化)を備えた車両で時速80km/車間10mで走行するというもの。コンセプトXは、2020年までを実用化目標に、一般車両が混在する高速道路を運転支援機能を備えた車両で時速80km/車間22mで走行するものとなっている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る