203X年のトラックは自動運転が主流に!? 「世界トップレベル」の技術に迫る:安全システム(2/3 ページ)
産総研のつくば北サイトで、大型トラックの燃費向上やドライバーの運転負荷軽減などを目的とした、自動運転・隊列走行技術の実証実験が行われた。研究開発を統括するNEDOの理事長を務める古川一夫氏が「世界トップレベル」と自負するその技術をリポートする。
車車間通信を活用したCACCで先行車両を追従
記者発表会では、JARIの主席研究員を務める青木啓二氏が、隊列実験車に搭載された要素技術のうちいくつかポイントになるものを紹介した。
1つ目は、高精度の車線維持技術である。現在、市販車両に搭載されている車線維持システムは車両前方にカメラが向いているが、逆光や夜間の降雨時には反射によって白線を認識できなくなってしまう。このため、隊列実験車では車両の左側方に下向きのカメラを2台取り付けて、反射による影響を排除した高い白線認識率を得ている。白線認識装置で得られたデータを基に、制御ECU(電子制御ユニット)が車線維持制御アルゴリズムによってステアリングの操舵モーターを制御する仕組みだ。側方カメラからの白線画像認識は弘前大学、横方向の車両運動モデル設計と目標軌跡生成アルゴリズムは日本大学、車間距離4mでの隊列走行制御アルゴリズムは神戸大学が開発した。
2つ目は、高精度の車間距離制御技術だ。現在もトラックや乗用車向けに先行車と速度を合わせて追随するACC(Adaptive Cruise Control)があるが、これに車車間通信を使った車間距離制御技術を導入したCACC(Cooperative ACC)を開発した。車車間通信は20msごとに56バイトのデータ通信をしており、隊列を組んでいる全車両がデータを共有する。これにより、時速80km/車間距離4mで走行している最中に先頭車が急停止した場合でも、後続車両の追突を防げる。車車間通信技術は沖電気工業が開発に当たった。
3つ目は、安全性・信頼性を向上する技術で、走行を制御するECUのフェイルセーフ化、車車間通信の二重化、白線認識性能の高信頼化、前方障害物認識の高信頼化である。走行制御ECUは、大同信号が鉄道信号分野で用いているフェールセーフマイコン(自己診断により異常があった場合出力を遮断できる)を並列二重化して搭載しており、1系統に異常があった場合でも正常に走行を継続できる。もちろん、操舵制御装置およびブレーキ制御装置も二重化されている。
車車間通信は、5.8GHz帯の無線通信と820nmの光通信で二重化されている。白線認識機能は、先述の側方下向きカメラによる画像認識技術の向上の他、デンソーがレーザーレーダーを使った白線認識技術を開発している。前方障害物の認識では、東京工業大学がステレオカメラを用いた障害物認識技術を開発し、NECが荒天や夜間でも画像を得られる遠赤外線ステレオカメラを開発した。さらに、レーザーレンジファインダーとミリ波レーダーを組み合わせて車両の周辺環境を認識するアルゴリズムや、それを基にした先行車両の認識技術を金沢大学が開発した。
省エネ効果は15%以上
研究開発では、実車での検証に先立ち、数値流体シミュレーションを用いて、大型トラック3台による隊列走行時の省エネ効果を予測した。単独走行しているトラックのCd値(空気抵抗係数)を100%とした場合、3台で隊列を組んだときの先頭車両と最後尾車両は70数%、隊列の中央に位置する車両は約50%となった。時速80km/車間距離4mに設定した場合の燃費向上率(3台分をまとめたもの、以下同)は15%と計算された。
この予測に対して、隊列実験車3台を使った実証実験(平地)での結果は、時速80km/車間距離10mで燃費向上率13.7%、時速80km/車間距離4.7mで燃費向上率15.9%を達成している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.