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アナログ手法でできなかったことはITシステムを入れてもできませんモノづくりにおけるITをもう一度考える(2)(3/3 ページ)

モノづくりにおける「ITの価値」について考察する本連載。1回目は「ITとは何か」を掘り下げて解説したが、今回はよりモノづくりにフォーカスし、製造現場の例などを紹介しながらITの役割について説明する。

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システム構築成功のカギ

 さて、今回のまとめに入ろうと思う。今やどんな業種でもITを活用しなければ競争力は伸びないだろう。だがITはツールであることを忘れてはならない。システムを構築するにあたってまずやるべきことは、現在の業務のムダの排除だ。ムダだらけの業務をそのままにシステムを構築したら、それこそムダだらけのシステムになってしまう。

 そのために私がカギとしているのは、以下の2点だ。

  • スモールスタート
  • レアケースは考えない

 「一人完結デジタルセル」はたった4台から始まった。当然問題だらけであったわけだが、それらを1つ1つ対策しながら、新機種立ち上げに合わせて10台、20台と徐々に増やして行った。

 その結果、2年後の2002年には全ての製品が「一人完結デジタルセル」で生産されるようになった。その数は最大で200を超えたが、そのプロセスにおいて生産に大きな支障を来すトラブルはなかった。スモールスタートは技術面でも投資面でもリスク回避となる。

 一方、システム構築時には「こんな場合もある、あんな場合もある」とめったにないケースを問題提起する人間が必ず出てくる。本人に悪気はないのだが、それはシステム構築に対してネガティブな作用をもたらす。

 私は「では、それは何パーセントの確率で起こるの?」と聞くことにしている。「そうですね、年に1度か2度……」「そんなレアケース放っておこうよ、いやそのレアケースを起きないようにできないの?」と説得することにしている。

 ERPなどの大きなシステムを導入する時も同じことが起きがちだ。「あんな場合もある、こんな場合もある……」それらすべてに対処することが結局は過度なカスタマイズと、システム構築の期間遅延、そして保守費用の増大につながるのだ。

 「導入するERPの仕様にできる限り仕事を合わせ込む=ムダの排除」。この当たり前のことを経営者が理解していないと、ERPは本来の機能を発揮してくれない。この点は声を大にして言いたい。

(次回に続く)




筆者紹介

関伸一(せき・しんいち) 関ものづくり研究所 代表

 専門である機械工学および統計学を基盤として、品質向上を切り口に現場の改善を中心とした業務に携わる。ローランド ディー. ジー. では、改善業務の集大成として考案した「デジタル屋台生産システム」で、大型インクジェットプリンタなど大規模アセンブリの完全一人完結セル生産を実現し、品質/生産性/作業者のモチベーション向上など大きな効果を生んだ。ISO9001/14001マネジメントシステムにも精通し、経営に寄与するマネジメントシステムの構築に精力的に取り組み、その延長線上として労働安全衛生を含むリスクマネジメントシステムの構築も成し遂げている。

 現在、関ものづくり研究所 代表として現場改善のコンサルティングに従事する傍ら、各地の中小企業向けセミナー講師としても活躍。静岡大学工学部客員教授として教鞭をにぎる。



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