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アナログ手法でできなかったことはITシステムを入れてもできませんモノづくりにおけるITをもう一度考える(2)(2/3 ページ)

モノづくりにおける「ITの価値」について考察する本連載。1回目は「ITとは何か」を掘り下げて解説したが、今回はよりモノづくりにフォーカスし、製造現場の例などを紹介しながらITの役割について説明する。

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アナログ作業の苦労を生かしたシステム構築

 プロジェクトが一定の効果を挙げてから約4年後、「一人完結型デジタルセル」が誕生するのだが、この時には、先述したデータ収集の苦労が非常に役立った。「損する仕事」の排除「儲からない仕事」の排除の2つが実現できれば、おのずと「儲かる仕事」すなわち「付加価値作業」の占める割合が増える。ムダな作業を抑えるということを目的とし、デジタル機器やITを駆使したのである(図2)

図2 「一人完結デジタルセル生産」のシステム構築方針
図2 「一人完結デジタルセル生産」のシステム構築方針(クリックで拡大)

 本コラムはITがテーマであるので、主にデータの自動取得・自動分析の例を紹介しよう。

  • 作業者が部品トレイに手を差し入れると光電スイッチでタイムスタンプ取得
  • 電気ドライバーがトルクアップするとタイムスタンプ取得
  • デジタル測定器からは測定結果を自動取り込み
  • 検査データに見逃せない異常値が出たら作業者の元にスタッフを自動呼出し
  • 生産計画との差異(遅れ、進み)を生産管理スタッフのPCにリアルタイム表示
  • 作業マニュアル(3次元CADデータから作成)をセルのディスプレイにリアルタイム表示

 まだまだ書ききれないほどの機能があるが、カギとなっているのは「データの自動収集」だ。データは可能な限り詳細に集め、それをアプリケーションで処理し、工場の管理ツールとするのである。作業者にデータを打ち込ませたり、作業の開始、終了時にスイッチを操作させることは「儲からない仕事」の増大につながる。

 不勉強をさらすようでお恥ずかしい話だが、実は私は当時POPという概念を知らなかった。独立起業した2010年に、生産管理システム「T-Pics」で有名なシステムユニ社長の岡田敏明氏に「一人完結デジタルセル生産はPOPの観点からも素晴らしい」とお褒めの言葉を頂いた。その時は「え、POPって何ですか?」というのが私の状況であったが、岡田氏の論文を拝読して「確かに自分の考えてきたことはPOP=生産時点管理だなあ」と納得することができた。しかも私は「一人完結デジタルセル生産」用のシステムを「D-Pics(Digital Production Indicate & Control System)」と名付けており、システム名もまさかの1字違いという奇遇な出来事があった。

システムは内作が好ましい

 D-Picsと名付けた生産管理システムだが、私は次の2点にこだわった

  • 絶対内作
  • 情報システム部門に仕事を投げない

 今までにないものを作ろうとしているのだから、もし外作しようとしても「仕様書」が書けない。また、とんでもない数の変更が起こることは想像に難くない。しかも初期費用はもちろんのこと、保守費用も莫大なものになるだろう。これは社内の人間に作ってもらう他に手はない。

 しかし、情報システム部門に依頼してしまったら、自分が直接指示できない。そのため納期などのコントロールが効かない。そもそも情報システム部門に製造部門の「思い」を伝えることが困難だ。

 どうしようかと悩んでいたところで白羽の矢を立てたのは、数カ月前にソフトウェア開発部門から異動してきたA君だった。あまりコミュニケーション能力は高くなく、しかも異動したばかりで製造のことはあまり詳しくない。しかし、われわれが「こういう仕組みを作りたい」と伝えるだけで、卓越したプログラミング能力を発揮し、混沌とした中でシステム開発を短時間で実現してくれた。A君の存在がなかったら「一人完結デジタルセル」は開発期間が大幅に伸びたことだろう。

 今でこそ製造部門にSE的役割を担う人材を配置することは珍しくないが、12年以上前にその状況にあったことは今思えば、とてもラッキーなことだった。

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