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将来のモノづくりを担う人材を力強く支えよう車を愛すコンサルタントの学生フォーミュラレポ2012(3)(1/3 ページ)

第10回 全日本学生フォーミュラ大会出場チームへのインタビューシリーズ、いよいよ最終回。今回登場する2校はどこでしょう?

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 お待たせしました。年をまたいでしまいましたが、前回に引き続き「第10回 全日本学生フォーミュラ大会」(静岡県袋井市内の小笠山総合運動公園、通称「エコパ」で開催)に出場したチームへのインタビューを紹介しつつ、私の偏屈な車への思いなども“明るく楽しく”つづります。今回は最終回です。

*スペックなどは学生フォーミュラチームの公式サイトからの引用が含まれます。本戦時とは異なる可能性があります。

大阪大学

 第8回大会は3位、第9回は優勝と常に上位入賞をキープする「大阪大学フォーミュラレーシングクラブ(OFRAC)」。第10回は、搭載エンジンのカワサキ(ZX600)をイメージさせるライムグリーンをアクセントに使った黒いカウルが勇ましいマシンで参戦です。同大学 R&Dチーム 2011年度プロジェクトリーダーの久堀拓人さん(以下、Kさん)にお願いしました。ちなみに久堀さんは、前回の第9回大会について書いた私の記事にも登場しています。


大阪大学の車両

関(以下SS) 今回のマシンも非常に出来がいいねぇ。

K ありがとうございます。カウルデザインもようやく他の上位校に並ぶレベルになったと自負しています。

SS 今回のマシンの大きな変更点は?

K 大きなところでは「ホイールサイズの変更」「サスペンションユニットの変更」です。限界性能を向上させましたが、われわれのチームはドライバーのスキルが低いので、限界内での扱いやすさを求めて、限界を超えたときの挙動変化を穏やかにする方向でセッティングしました。

SS 相変わらずコンセプトがしっかりしてるなぁ。あれ? 例の「吸気ファンネル長可変システム」がないように見えるけど?


可変吸気システムに見入る筆者

K いえ、ちゃんと使っています。今回はサージタンクに透明部分がないので見えないのです。前回(2011年)はファンネルの長さが変わってもサージタンク容量が変わらなかったので、過渡特性がややナーバスになりました。今回はサージタンク内に可動する壁を設け、ファンネルの長さに合わせて、サージタンク容量も変化するようにしました。

SS 進化してるなぁ! 山下さん(取材に同行したシンクフォーの山下祐氏:以下YY)、すごいでしょう?

YY エンジン回りがすっきりしています。完成度高いですね! 先ほど「ラップタイムのシミュレーションをしている」と話していたけど、どうやっているの?

K スポンサーであるVI-grade社の「VI-CarRealTime」を使用しています。車両重量などの線形要素は精度が高いので、シミュレート結果をそのまま使用できますが、ヨー慣性モーメントなど非線形な要素はシミュレートよりもドライバーのインプレッションを優先しています。

SS 前回の優勝、準優勝校が残念ながらエンデュランスでリタイアしちゃったけど、今回の結果予想は?(インタビュー時は2012年9月6日なので、まだ総合結果が出ていません)

K エンデュランスをはじめ動的審査でかなりいいタイムを出していますので、2位か1位か……。

SS 今回やり残したと感じる点はありますか?

K 前後の荷重配分なのですが、コーナー入り口ではブレーキを残しながら操舵してもきちんと回頭するようになっています。でもコーナー脱出時にトラクションをもっと得るためにもう少しリアに配分を持ってきてもよかったかなと。徐々に上がってくるドライバーのスキルに合わせたセッティングができなかったということです。

 ――このチームのレベルの高さには毎回本当に驚かされます。最終結果は、コスト1位、デザイン2位、プレゼンテーション6位(以上静的審査)、動的審査はアクセラレーション1位、スキッドパッド6位、オートクロス9位、エンデュランス9位、燃費3位と全ての審査で1桁順位。そして総合で準優勝です。おめでとうございます!

 ちなみに大学院修士課程2年生の久堀さんはこの大会時点で、大手自動車メーカーへの就職が決まっていました。その実力を余す所なく生かして、明るく楽しく自動車開発に従事できることを願って止みません。「頼むよ! XXX社で面白い車作ってよ!」と最後に声を掛けさせていただきました!


まるで自動車会社の開発エンジニアのごとくインタビューに的確に回答してくれる久堀さんと筆者

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