将来のモノづくりを担う人材を力強く支えよう:車を愛すコンサルタントの学生フォーミュラレポ2012(3)(2/3 ページ)
第10回 全日本学生フォーミュラ大会出場チームへのインタビューシリーズ、いよいよ最終回。今回登場する2校はどこでしょう?
京都工芸繊維大学
さて、京都工芸繊維大学の登場です。このチームのピットを訪れると、「お〜い、みんな! MONOistさんが! 関さんが来てくれたぞ!」と大歓迎を受けました(笑)。第9回の私のレポートも読んでくれていて、「うちのチームにも取材に来てほしいなぁ」と思ってくれていたそうです。本当にありがたいことです。
さて以降は、同大学のチームリーダーの岡本さん(以下O)にお話をお聞きしました。
SS 今回のマシンの特徴はどんな感じ?
O 今回のエンデュランスコースのレイアウトが前回よりもテクニカルなので、脚周りのジオメトリーを変更し、サスペンションユニット(Ohlins Racing製学生フォーミュラ用)のセッティングも詰めました。
SS セッティングはシミューションで決めるの?
O いいえ、走行後のタイヤの状態を目で見て決めます。「きちんと使えているか」「偏摩耗はないか」など。また、ドライバーのインプレッションも重要な情報です。
SS 今回は相当成績が良さそうだね!
O はい。オートクロスは予想がはまってうまくいきました! 前日の天気予報から、路面温度が最適になる時間帯に出走するようにしたんです。テスト走行時よりも良いタイムが出ました!
SS 走行シミュレーション的なことはしないの?
O はい。過去の経験やデータを重視しています。頭の中のコンピュータシミュレーションですね(笑)
SS リアブレーキに冷却ファンが付いているのは珍しいなぁ。
O センターのシングルブレーキなので、エンデュランスではどうしてもフェードしてきて、ペダルの踏み代が変化してしまうので、その対策です。
YY 細かい部品の作り込みがすごいね。これは5軸加工だなぁ……。
O 溶接ですと精度が出ないし、平面部品ですと自由度が小さくなります。スポンサー企業さんにお願いして作ってもらっています。本当に助かっています。
SS この真っ赤なエアチャンバー、武骨な形をしているねぇ。
O 実は3次元プリンタで作り、強度UPのために樹脂で覆ったんです。内部は結構精密なんですよ。
SS 3次元プリンタはどんなタイプを使ったの?
O ABS樹脂を溶融して積層するタイプです。
SS おお、最近主流になりつつあるよね。エンジンは何を使っているのかな?
――ここでエンジン担当の学生さん(以下E)登場
E スズキLTR450です。ミッションもそのまま流用ですが、エンジン内外部にショットピーニング加工を行っています。
SS 外にショットピーニングするのは冷却に効果があるだろうけど、内部とは?
E 出力UPに寄与すると思ってやっていますが、エンジンは分解して組み立てる度に微妙に性能・特性が変わりますので、どれくらい寄与したのかは分かってないです。
O ステアリングはバルサ材で芯(しん)を作って、カーボンクロスを貼り付けています。(笑いながら)人間工学に基づいた設計です。
SS シートが2つ置いてあるけど?
O 2人のドライバーの体格が違うので、それぞれに合わせています。人間工学的な考えに基づいています(笑)
SS シートの色も青と黄色で識別できるようにしてあっていいねぇ。で、なぜ黄色なの?
O はい、ファーストドライバーのラッキーカラーが黄色なんです。彼のウェアにも黄色が入っていますでしょう?
SS このチームは他チームとは少し雰囲気が違うなぁ。シミュレーションよりも感覚重視、ラッキーカラーを取り入れる。デジタルとアナログが融合したチームかな。必ず記事書くから楽しみにしていてね!
O ありがとうございます!
――京都工芸繊維大学は「CATIA V5」を使っています(ちなみに今大会2位〜10位のチームは「SolidWorks」)。設計にハイエンドCADを使いながらセッティングはアナログ重視、実に興味深いです。
そして成績は、コスト2位、プレゼンテーション11位、デザイン8位(以上静的審査)、アクセラレーション16位、スキッドパッド2位、オートクロス1位、エンデュランス1位、燃費1位とアクセラレーションを除く動的審査で圧倒的な強さを見せつけました。特にオートクロスでは「58秒07」と唯一1分を切り、2位の大阪大学に9秒もの大差を付けての“ブッチギリ”でした。そして京都工芸繊維大学は、2007年の初参戦から6年目にして、とうとう初優勝! おめでとうございます!
編集部より
京都工芸繊維大学チームについては、後日公開する山本照久さん執筆の記事
で詳しく紹介します。
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