ウェアラブルコンピュータがなぜ再び脚光を浴びているのか?:本田雅一のエンベデッドコラム(21)(3/3 ページ)
誰もがスマートフォンを所有し、スマートフォンに情報が集まる時代。スマートフォンを“インフラ”として捉え、製品やコンセプトを見直してはどうだろうか。使い古されたはずのコンセプトが、再び輝きを放つかもしれない。
さまざまなシーンでスマートフォンが積極的に活用されていく
Google Glassにしろ、各種ライフログデバイスにしろ、そのベースとなるアイデアは、以前からあったものだ。もちろん、技術の進歩によって、ようやく製品として通用するようになったともいえるが、スマートフォンが通信とコンピューティングの基礎的な機能を提供しているからこそ、成り立っている面もある。
いかがだろう。このあたりで過去を一度振り返り、現在という時間軸で製品やコンセプトを見直してみてはどうだろうか。
例えば、社会インフラの中に各種センサーを配置しておき、より心地の良いライフスタイルを送るための補助的な情報を提供するというのはどうだろう。センサーネットワークを用いたアプリケーションは、さまざまなコンセプトが提案されてきたが、スマートフォンを前提にするならばアイデアは広がるだろう。
ご存じのように自動車の電子装備などは、既に変化が始まっている。今やカーナビゲーションシステムやカーオーディオといった車載情報機器にBluetoothが備わり、無線で音楽を再生できるのは当たり前。スマートフォンの地図アプリケーションと連動したり、スマートフォンの通信機能を活用したりというのも、ごく自然な流れといえる。スマートフォンの持つパワフルな機能を、もっと積極的に活用できるようになるのも時間の問題だろう。
ホンダは同社の純正カーナビ向けサービス「インターナビ・プレミアムクラブ(以下、インターナビ)」の機能を活用したカーナビゲーションアプリを「iPhone」向けに開発。写真はインターナビアプリを組み込んだiPhoneと連携動作が可能なディスプレイオーディオを接続した状態(関連記事2)
あるいは、マッサージチェアにセンサーを内蔵させておき、マッサージを楽しむ度にそのログが記録されていけば、クラウド側のサービスとスマートフォンのアプリケーションで、何らかの情報やアドバイスをユーザーに提供できるかもしれない。
やや荒唐無稽に感じるかもしれないが、毎日仕事の道具として使っているPCも、スマートフォンとの関係を見直せば、新しい使い方を提案できるのではないだろうか。PCを主語として語る時、かつての携帯電話機は、常にPCから利用する周辺機器でしかなかった。しかし、モバイルネットワークを通じて、個人にひも付いたさまざまな情報が集まってくるスマートフォンとPCとの間を、単純な主従関係で結ぶのはナンセンスだろう。
PCとスマートフォンを“対等な位置関係”に置いて考え直すことが、PC(特に、常に持ち歩くモバイルPC)の向かうべき方向なのかもしれない。
製品を作っているわけではない筆者が、これ以上、具体例を語るのは陳腐なことだ。しかし、思い返してみよう。大きなイノベーションの後、刷新された新たな環境の中で、使い古されたはずのコンセプトが見直された例はたくさんある。まずは、身の回りを見直してみてはいかがだろうか。
筆者紹介
本田雅一(ほんだ まさかず)
1967年三重県生まれ。フリーランスジャーナリスト。パソコン、インターネットサービス、オーディオ&ビジュアル、各種家電製品から企業システムやビジネス動向まで、多方面にカバーする。テクノロジーを起点にした多様な切り口で、商品・サービスやビジネスのあり方に切り込んだコラムやレポート記事などを、アイティメディア、東洋経済新報社、日経新聞、日経BP、インプレス、アスキーメディアワークスなどの各種メディアに執筆。
Twitterアカウントは@rokuzouhonda
近著:「iCloudとクラウドメディアの夜明け」(ソフトバンク新書)
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