たった1つの設計プロテクニック「切り起こし」:甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(9)(1/3 ページ)
実は、「切り起こし」だけで、プロの板金設計ができてしまう。だからといって、それだけ覚えるのはダメ。これまで学習したことの積み重ねがなければ意味がないのだ。記事の最後の「溶接の話」と「あの人」にもご注目。
当連載の登場人物
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生まれのイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
「良い会社、悪い会社」の反響
前回の最後に『「良い会社・悪い会社」の見分け方(國井流)』について書きました。記事を公開して間もなくして、学生や学校関係者からメールが来ました。これには筆者も驚きました。その内容の代表例が以下です。
- ベンチャー企業を選択するときに使える
- ネームバリューやブランド志向で企業を選択していたが、目が覚めた
- 今、大企業が崩れる中、役に立つ知識
- 「率」の入手が困難……
前回も紹介した「よい会社、悪い会社」の判別の指標は、以下の3つです。
- 特許出願率
- 女性技術者在籍率
- 技術者役員在籍率
筆者は、特に1の「特許出願率」と2の「女性技術者在籍率」に注目してもらいたいと考えます。
実は、当事務所の調査によると、前述の「3つの率」と「5N(5“ない”)」に大きな相関係数があったのです。5Nは「灯油ポンプの設計書を書こうじゃねぇかい!」を公開して以来、何度か甚さんシリーズの記事で紹介してきました。
以下が「設計の5N」ですが、企業規模の大小とは関係なく発生しています。
- 競合機分析やらない
- 強度、安全率、累積公差計算しない
- 特許出さない
- コスト見積もりしない
- 設計審査やらない
残念ですが、これではグローバルで戦えません……。当てはまる場合は、末期症状の企業です。
まだ、もう1つあるぜぃ!
甚さん! なっ、なんですか? なんですか?
それはなぁ、「イメージだけ」のテレビCMを流している企業だ!
そうなんです……。企業イメージだけを、新聞、週刊誌、ポスター、ラジオ、そして、TVコマーシャルに流している企業は注意が必要です。「注意」とは、単に回避するのではなく、十分な調査が必要という意味です。
実際、企業イメージが悪いことを熟知しており、イメージコマーシャルだけで改善しようとしている“小手先の企業”が少なからず存在しています。もちろん、「真の優良企業」の例外もありますから、気を付けてください。あくまでも傾向なので、参考情報とお考えください。
しかし僕みたいに、既にそんな企業に勤務しちゃってる場合はどうしたらいいんですか? 毎度も言っていますけど、ウチの課長は、特許申請どころか、検図もできないし、設計審査もできません。
ああ、確か、部長もそんなヤツだったよなぁ?
そうなんです! 部長ときたら、退職金や年金や再雇用のことばかり気にしています。パソコンで仕事しているフリしているけど、実は、ネットサーフィンしてるだけ。職場の皆が知っていますよ。
とにかく、設計改革を提案しろっ! 3回提案してもダメだったら……残念だがよぉ、転職を考えろ。でもいいか、転職は最後の手段だぞぉ!
分かりました、甚さん! もうしばらく、ここで頑張ってみます。
簡易展開寸法が、なぜ重要なのか
それでは早速、行きましょう! 前回の「簡易展開寸法:L=a+b+0.5t」の説明のとき、『「なぜ重要か」は、本連載中で解説しますので、ご期待ください』とのことでしたね。
合点承知! ……あ、まるで良君みたいな返事しちまった。しかしよく覚えていたなぁ。うれしいじゃねぇか。実は、それが今回のテーマだ。そんじゃよぉ、まず第1回で出した「絵辞書」を出せ!
はい、いつも持ってますっ!
実は、第3回の「三角リブは低コスト化設計の“調味料”」ではよぉ、板金設計のプロが使う調味料として、オメェには「三角リブ」を教えてやったがよぉ、もっとスゲェーのがあるんだぜぃ。
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