絞り加工と溶接加工の変形技で目指せ! 100%プロ領域:甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(8)(1/3 ページ)
今回は、絞り加工と溶接加工を合わせた板金ボックス変形技の紹介。記事後半に、國井流「良い会社・悪い会社」の判別法付き!
当連載の登場人物
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生まれのイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
第7回の「ボックス形状を押さえる設計、これがプロの実務だぜぃ!」はいかがでしたか? “設計者”による「設計」と、“3次元モデラー”による「造形」との差異も理解できましたでしょうか?
一方、設計というプロセスは、理屈というよりも一つの流れ(フロー)に沿って展開していきます。
つまり……、以下の流れに沿っていることを理解できたでしょうか。
企画⇒仕様⇒設計書作成⇒設計審査⇒構想設計⇒製図⇒試作⇒量産
従って、「いきなり3次元CADで設計着手する」ということはあり得ないのです。
筆者は度々、「料理を設計、料理人を設計者」にたとえて解説してきました。どちらも職人がなすことなのでよく理解できるからです。
今回は、カレーライスに例えて考えてみましょう。カレーライスを食べたいならば、食材選択から始まり、ご飯もカレールーも野菜も肉もその下準備や仕込みが必要です。もし、あなたが3次元モデラーなら「2分でチン」もせず、いきなりご飯パックのラップシールを剥がし、いきなりレトルトカレーをご飯にかけて食べてください。ボソボソの冷たいご飯に冷たいレトルトカレー。「冷やしカレーライス」の登場です。真冬でも毎日どうぞ! これが、いきなり3次元CADに着手する3次元モデラーに相当します。
甚さん! そんなことないと思いますよ。皆、きちんと頭の中で考えていますよ。
「きちんと頭の中で考えている」だと? ああ確かに、70年前ならそれでよかった。零式戦闘機、つまり、第二次世界大戦前の話だ。
そう、「頭の中で考えている」というせりふは、設計書がない企業の設計者がよく使う言い訳なんです。頭の中……、これでは設計審査ができません。
料理には、食材の選択や下準備や仕込み、そして、道具が必要だぁ。設計もまったく同じだろがぁ。そんじゃ、図1の設計フローで見てみようぜぃ!
商品設計や部品設計や生産設備設計には、以下のような手順があります。
企画⇒仕様⇒設計書作成⇒設計審査⇒構想設計⇒製図⇒試作⇒量産
「設計」という仕事は、まず設計書(図の中央)を作成します。さらにその設計書は、審査されます(設計審査)。「審査」なのですから、「承認」と「却下」「再審査」という単語が設計部には存在するはずです。もしないとしたら、70年前以上の企業と同じです。今や「手抜きの企業」といっても過言ではありません。
そういえばなぜ、このテーマの特訓が始まったのですか?
よく聞いてくれたぜぃ、さすがに富士山麓大学院卒の良君だ! 実はなぁ、本連載を「板金設計の“小手先テクニック”」と理解されては、ちょいと困るんだ。
なるほど、だから3次元モデラーが登場したのですね。確かに彼らは、いきなり3次元CADです。
そうだろがぁ! キチンと設計のフローに従って、最適な板金設計法を選択しろってんだ。つまシ、「設計書の作成⇒設計審査」のプロセスは外すな! ってことよ! オメェはどうだ? あん?
僕なら大丈夫です。甚さんシリーズの第1回、つまり、2009年から始まった「甚さんの設計分析大特訓」で、設計書の重要性を理解し、そして今も、設計書を作成していますから!
良君! 年始めから冴えまくっているなぁ? あん? まるで、日経平均株価のようだ。オメェのお株も急上昇じゃねぇかいっ! そんじゃ、本題にへいるぞっ!
前回、「甚さん! 展開ってなんですか?」という良君のセリフが出てきましたが、今回は「板金の展開図」の基礎を学びます。
図2は、板金の展開図の基本形です。教科書には掲載のない情報ですから、しっかりと理解しておきましょう。図中にある「簡易展開寸法:L=a+b+0.5t」、これが、甚さんからの重要メッセージです。
「なぜ重要か」は、本連載中で解説しますので、ご期待ください。
図中の簡易展開寸法があるがよぉ、複雑な形状の場合は、図中の下方にある2回曲げ部品を見チくれ。展開寸法は、中心線の長さを求めればOKだぜぃ!
なぁ〜るほど、板金曲げの内側は圧縮、外側は引っ張り。従って、中心線の長さを求めれば、展開寸法に相当するわけですね。しかも、その計算は小学生レベル……ですね!
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