「走る歓び」を支える先進安全技術はドライバーへの信頼が基本:マツダ 安全システム 車両開発本部長インタビュー(1/2 ページ)
マツダの新型「アテンザ」は、9つの安全機能を持つ先進安全技術「i-ACTIVSENSE」を搭載している。同社の安全技術に対する考え方や、i-ACTIVSENSEの特徴、今後の技術開発の方向性について、同社の執行役員で車両開発本部長を務める素利孝久氏に聞いた。
2012年11月20日に新型「アテンザ」を発売するマツダ。新型アテンザは、2012年2月発売のSUV(スポーツ多目的車)「CX-5」に次いで、同社の新世代技術「SKYACTIV TECHNOLOGY」を全面採用している。
CX-5との大きな違いとなるのが、キャパシタを用いる減速エネルギー回生システム「i-ELOOP」と、9つもの安全機能を備える先進安全技術「i-ACTIVSENSE」(関連記事)の搭載である。特に、マツダがこれまでに培ってきた安全技術の集大成であるi-ACTIVSENSEには、「ドライバーを最大限に信頼する」という、同社の安全思想が反映されている。
そこで、同社の安全技術に対する考え方や、i-ACTIVSENSEの特徴、今後の技術開発の方向性について、同社の執行役員で車両開発本部長を務める素利孝久氏に聞いた。
「人馬一体」の走りには安心と安全が必要
MONOist 最近になって、i-ACTIVSENSEのように、ミリ波レーダーやレーザーレーダー、車載カメラを使った予防安全システムを採用する車両が増えています。この傾向についてはどのように捉えていますか。
素利氏 自動車の安全技術は日々進化していますし、コスト削減も進んでいます。例えば、自動車の初期の安全技術といえば、ボディの剛性を高める衝突安全が主流でした。しかし、どれだけ衝突安全性能を高めても、衝突時に乗員に掛かるエネルギーを逃がすことはできません。そこで、まず採用が広がったのがシートベルトであり、エアバッグなのです。エアバッグは当初は高価でなかなか採用が広がりませんでしたが、現在ではコスト低減が進んだこともあって、運転席用から助手席用、サイドエアバッグなど車両1台当たりの搭載数も増えています。
同様に、急ブレーキ時にタイヤがロックして滑ってしまう現象を抑制するABS(アンチロックブレーキシステム)も、当初は高価で普及しませんでしたが、今では標準装備になっています。i-ACTIVSENSEのような予防安全システムも、採用が広がる時期に入っているのではないでしょうか。
MONOist i-ACTIVSENSEの開発の基礎になっている安全思想について教えてください。
素利氏 まず、マツダの自動車開発の方向性として、ドライバーが感じるままに自動車を運転できる「人馬一体」という考え方があります。そういった考え方に基づいた自動車開発を行ってきたこともあって、「マツダ車は走行性能が高い」というイメージを持っていただけているのではないでしょうか。
新世代シャシー技術である「SKYACTIV-CHASSIS」を初めて採用したCX-5では、この人馬一体を高いレベルで実現できたと考えています。そして、より高いレベルの安心と安全があれば、人馬一体の走りをさらに楽しめるはずです。新型アテンザから採用するi-ACTIVSENSEは、ドライバーにこの安心と安全を提供するための技術なのです。
i-ACTIVSENSEには9つの安全機能がありますが、これらを開発する際の基本思想となっているのが、ドライバーへの信頼です。自動車の運転は、「認知」、「判断」、「操作」の順番で行いますが、i-ACTIVSENSEは、ドライバーに周辺の状況を知らせて、しっかりと認知してもらい、その次の判断と操作につなげることに重点を置いて開発しました。
もちろん、衝突を回避したり、衝突被害を軽減したりする機能も搭載しています。しかし、これらの機能は、ドライバーが人間であるが故に起こしてしまう、万が一のミスに対応するためのものです。自動車が勝手に判断して回避行動をとるといった安全機能を開発しようとは考えていません。「走る歓び」をフィーチャーする「Zoom-Zoom」を企業スローガンとするマツダとして、先進安全技術を開発する際にも、ドライバーに快く運転してもらうことにフォーカスします。
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