「走る歓び」を支える先進安全技術はドライバーへの信頼が基本:マツダ 安全システム 車両開発本部長インタビュー(2/2 ページ)
マツダの新型「アテンザ」は、9つの安全機能を持つ先進安全技術「i-ACTIVSENSE」を搭載している。同社の安全技術に対する考え方や、i-ACTIVSENSEの特徴、今後の技術開発の方向性について、同社の執行役員で車両開発本部長を務める素利孝久氏に聞いた。
2006年から安全戦略を企画
MONOist i-ACTIVSENSEには、9つの安全機能があります。それぞれの開発の経緯や特徴を教えてください。
素利氏 マツダは2007年に、走る歓びに加えて、環境と安全にも重点を置く技術開発の長期ビジョン「サスティナブルZoom-Zoom宣言」を発表しています。実は、安全技術の開発戦略については、それより以前の2006年に策定していました。i-ACTIVSENSEは、この戦略に基づいて開発してきた個別の安全技術を1つにまとめたものです。
例えば、ミリ波レーダーを用いる、MRCC(マツダ レーダー クルーズコントロール)、FOW(前方衝突警報システム)、SBS(スマートブレーキサポート)は、安全技術の開発戦略を策定する以前の2003年から開発を始め、2006年発売のミニバン「MPV」に搭載しています。2008年に発売した現行のアテンザには、準ミリ波レーダーを用いるRVM(リアビークルモニタリングシステム)を初めて搭載しました。レーザーレーダーを用いるSCBS(スマートシティブレーキサポート)とAT誤発進抑制制御はCX-5から搭載を始め、カメラ系システムであるLDWS(車線逸脱警報システム)とHBC(ハイビームコントロールシステム)は、欧州仕様のCX-5で実用化しています。
MONOist ミリ波レーダーを用いる安全機能はMPVに搭載してから6年も経過しています。i-ACTIVSENSEでは、6年前と比べて性能は向上しているのでしょうか。
素利氏 i-ACTIVSENSEで使用しているミリ波レーダーは、MPVで採用したころと比べて格段に性能が向上しています。検知距離は、従来比で約1.5倍となる200mまで伸びました。検知角度範囲も、従来の±7.5度から±10度に広がっています。さらに、このミリ波レーダーは、検知距離が短い場合であれば検知範囲を±36度まで広げられる機能も備えています。ミリ波レーダーの性能向上に合わせて、安全機能の性能も向上しています。
ミリ波レーダーは、性能向上だけでなくコスト削減も進んでいます。ミリ波レーダーをはじめ、準ミリ波レーダー、レーザーレーダーといった予防安全システムのセンサーデバイスは極めて高価でした。車載カメラを含めた4つのセンサーデバイスと9つの安全機能を1つにまとめてi-ACTIVSENSEとして提供できるようになったのは、これらのセンサーデバイスのコスト削減が大きく寄与しています。
歩行者認識にはステレオカメラが必須
MONOist 今後に向けて、現在はどのような安全技術を開発していますか。
素利氏 ミリ波レーダーとステレオカメラの検知信号を融合させる、センサーフュージョンシステムの開発を進めています。これは、金属物からの反射によって障害物を検知するミリ波レーダーだけでは難しい歩行者を認識する機能と、時速50〜60kmの速度差があっても衝突を回避できる機能を実現するためです。2016年までの市場投入を考えています。
単眼カメラではなくステレオカメラを用いるのは、歩行者を認識できる確率を商品として提供できるレベルまで高めるのに必要だと考えているからです。
MONOist i-ACTIVSENSEのような予防安全システムの場合、自動車向けの機能安全規格であるISO 26262への準拠が求められる傾向にあります。特に、マツダにとって売り上げ規模の大きい欧州市場では、ISO 26262への準拠が義務化される可能性もあると言われています。マツダではどのような対応を進めていますか。
素利氏 欧州市場を重視しているマツダは、日本自動車工業会のISO 26262対応に向けた作業部会に人員を派遣するなど、ISO 26262への取り組みを重視しています。i-ACTIVSENSEの各安全機能については、ISO 26262に準拠する際に自動車メーカーがやっておかなければならないハザード分析を完了しています。
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