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ガソリン車でもハイブリッドに近い燃費を実現か、マツダがキャパシタ採用電気自動車 東京モーターショー 2011(1/2 ページ)

ハイブリッド車はエンジンとモーターを組み合わせることで高い燃費を実現している。実は通常のガソリン車でも似たような方法で燃費を高める手段がある。減速時のエネルギー回生だ。マツダは従来のバッテリーではなく、高効率な大容量キャパシタを採用することで、ガソリン車の燃費を10%高めるシステム「i-ELOOP」を開発した。

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ガソリン車でもハイブリッドに近い燃費を実現か、マツダがキャパシタ採用
キャパシタ採用車

 ガソリン車の燃費改善が強く求められている。エンジンやボディー、タイヤなど燃費に直結する部分はもちろん、減速時のエネルギーを再利用する回生エネルギーシステムも燃費改善に有効だ。

 通常、ガソリン車ではエンジンの回転力を利用してオルタネーター(交流発電機)を回転させ、バッテリー(鉛蓄電池)に充電している。エアコンやオーディオなどはバッテリーの電力を利用している。つまり、ガソリンの一部を使って電装品を動かしていることになり、これは燃費の低下につながる。

 そこで、減速時に捨てていた運動エネルギーを回収する方式が考案された。これが減速エネルギー回収システムである。運動エネルギーでオルタネーターを動かし、バッテリーを充電する。このようなシステムは各社のハイブリッド車や電気自動車を中心に広く採用されている。ただし、この方式では電力を十分に回生できず、効率が高くない。バッテリーの性能に制約があるからだ。

 マツダは2011年11月25日、乗用車用として蓄電器に「キャパシタ」を採用した減速エネルギー回生システム「i-ELOOP」(Intelligent Energy LOOP)を開発したと発表した。2012年から市販車(ガソリン車)に搭載する予定(図1)。マツダによれば、乗用車にエネルギー回生用途の大容量キャパシタを採用するのは世界初だ。


図1 減速エネルギー回生システム「i-ELOOP」を搭載した乗用車 「東京モーターショー2011」(2011年12月2〜11日、東京ビッグサイトで開催)に出展を予定する中型セダン車「マツダ 雄(TAKERI)」。出典:マツダ

 i-ELOOP搭載車では頻繁に加減速がある実用走行時、燃費を約10%改善する効果があるという*1)。これは大容量キャパシタ採用による効果だ。

*1) 一定速度で高速走行する場合は、減速時のエネルギーを回生することができない。このような場合は従来通り、エンジンでオルタネーターを駆動する。

 キャパシタは二次電池とは異なる原理で動作する蓄電デバイスだ。内部抵抗が小さいため、1回の減速で大量の電力を素早く回収できる。例えば、単位重量単位時間当たりに入出力できる電力量(パワー密度)が二次電池の10倍にも達する。これは電気二重層キャパシタの内部抵抗が数mΩ程度と低いためだ。このため、放電時のロスも少ない。

 さらに、二次電池とは異なり、繰り返し使用しても劣化がほとんどない。数千サイクルのリチウムイオン二次電池と比較すると、「数百万サイクルの充放電が可能であり、車体のライフタイムの間、交換せずに利用できる」(マツダ)。動作範囲も広い。「時速20km以上で減速すれば、動作する」(マツダ)。

アクセルから足を浮かせると起動

 i-ELOOPのシステム構成はこうだ(図2)。新たに12〜25Vの可変電圧式オルタネーターを採用し、DC/DCコンバータと、日本ケミコンが開発した低抵抗電気二重層キャパシタを追加した。キャパシタの重量は6kg、DC/DCコンバータの重量は1.8kgである。


図2 i-ELOOPの搭載位置 i-ELOOPは、オルタネーター(交流発電機)と電気二重層キャパシタ、DC/DCコンバータからなる。キャパシタの容量は非公開。出典:マツダ

 走行中にアクセルから足を浮かした瞬間からi-ELOOPが動作する*2)。最大25Vの電圧でオルタネーターが発電し、キャパシタを数秒で満充電できるという。キャパシタに一時的に蓄えられた電力をDC/DCコンバータで12Vに降圧し、直接エアコンやオーディオなどの電装品の電力として供給する。必要に応じてバッテリーも充電する。

*2) このとき、厳密にはエンジンブレーキが動作したような減速があるものの、「体感できない程度である」(マツダ)。さらに従来のバッテリーを使うエネルギー回生システムよりも無駄になるエネルギーが少ない。

 このようにキャパシタには二次電池にはない優れた性質がある。なぜこれまで自動車に使われてこなかったのだろうか。

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