無線充電の技術、誰が強いのか:電気自動車(2/2 ページ)
電気自動車や携帯型機器へ、コードを使わずに電力を送る無線充電技術。研究で先行する米国企業の特許を調査会社のパテント・リザルトがまとめた。上位5団体は、他の企業を寄せ付けないほど強力な3グループを形成していた。
上位5団体の特許はどの程度意味があるのか
パテント・リザルトは上位5団体の特許総合力の内容を分析している。それによれば、1位のAccess Business Groupは、Qi規格を推進するWPCの中でも重要な位置を占めることが示唆されるという。なぜだろうか。
同社の特許は米Fulton Innovationの技術*4)によるものだからだ。Fulton InnovationはWPCの創設メンバーの一員であり、電磁誘導型である「eCouple」技術を持っている。
*4) パテント・リザルトによれば、大半の特許はFulton Innovationからの権利移転ではなく、当初からAccess Business Group名義で出願されたものだという。Fulton Innovationは2008年5月に関連特許を保有していた英Splashpowerを(倒産後に)買収している。なお、パテント・リザルトの調査によれば、Fulton Innovationが取得したSplashpowerの出願は、全てAccess Business Groupに名義が変わっていたという。
WPCの中で重要な位置を占めるのではないかという予測を支えるもう1つの理由は、Access Business Groupの出願時期だ(図2)。2005年以前の出願件数が他に比べて圧倒的に多く、「当該分野における今後の権利化にはAccess Business Groupの特許が大きく影響を及ぼす可能性がある」という。
図2 上位5団体の特許出願時期 Access Business Groupは、2000年以前(青)や2005年以前(緑色系)の出願件数が過半数を占めることが分かる。他の4社は2006年以降に出願した特許が大半だ。出典:パテント・リザルト
MITグループは強力
Access Business Groupは単独では1位であるが、総合力2位のMITと4位のWiTricityを1つのグループとしてまとめると、図1の赤枠で示したように総合力で最上位に飛び出す。パテント・リザルトによれば、WitricityはMIT特許の専用実施権者(exclusive licensee)であることから、MITをWitricityと同一視したという。
図2を見ると、MITの出願は2006年(薄桃色)に極端に集中しており、その後はWiTricityの出願に切り替わっているように見える。WiTricityは2007年に設立された企業であり、新規の研究開発はWiTricityに移転したのだと、パテント・リザルトは判断した。
Qualcommは決して弱小ではない
総合力で第3位にあるQualcommも、Access Business Groupに近い総合力を備えているという。なぜなら、第5位にあるPowermat Technologies*5)と無線充電技術で提携関係にあるからだ。この他、米Nigelpowerから権利の移転を受けているという。
*5) 同社は、スマートフォンの電池付近に組み込むと、端末を無線充電対応にできる小型カード「WiCC(Wireless Charging Card)」を開発し、スペインで2012年2月に開催されたMobile World Congressで公開している。
なお、パテント・リザルトは今回の分析にあたり、クラウドベースで利用可能な自社開発の特許分析ツール「Biz Cruncher」を使用している。同社は、今回の分析について詳細にまとめた複数のリポート資料を販売している。
より深く知的財産管理を学ぶには?:「知財マネジメント」コーナーへ
知財マネジメントの基礎から応用、業界動向までを網羅した「知財マネジメント」コーナーでは、知財関連の情報を集約しています。併せてご覧ください。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- (日本編)無線充電の技術、誰が強いのか
セイコーエプソンがトップ - トヨタ自動車、電気自動車の無線充電に取り組む
駐車場の床下設置などを狙う - 広がる非接触充電、三菱自動車が開発始める
インフラのあり方の他、法制度の課題点抽出も進める - 自宅で電気自動車へ無線充電が可能に、IHIと三井ホームが開発へ
一戸建てと組み合わせた実験を開始 - EVの爆発的な普及には何が必要? 「無線充電」だ
ケータイの次は車で主導権を狙うQualcomm