広がる非接触充電、三菱自動車が開発始める:電気自動車
電気自動車(EV)が抱える課題の1つが充電インフラだ。三菱自動車は充電ケーブルを使わない非接触充電の研究を開始。トヨタ自動車や日産自動車なども同様の研究に取り組んでおり、EVと非接触充電を組み合わせたシステム普及が見えてきた。
電気自動車(EV)の普及を加速させるためには、3つの課題を解決しなければならないという声が強い。価格(電池コスト)と走行距離、そして充電インフラだ。
このうち、充電インフラは、家庭用の安価な普通充電装置の普及を進め、要所要所に急速充電装置を取り付けることで、いつでもどこでも充電できるように計画が進んでいる。例えば日産自動車は2015年度末までに2010年末の設置台数の10倍に相当する5000基の急速充電器を販売することを目指している。
さらに将来は、より進んだ充電インフラが登場する。充電ケーブルを使わない非接触充電(ワイヤレス充電)だ。
三菱自動車とIHI、米WiTricityは、2011年9月27日、EVに最適な非接触充電方式の構造や、インフラの適用を目指して研究開発を推進することを合意した。
3社は2011年12月までに、次の3種類の研究開発を開始する。
- 非接触充電インフラのあり方
- 非接触充電に関する法的な面の課題の明確化と提案
- 受電装置を組み込んだEV本体と、送電装置との充電実証
最初の研究課題は、そもそもどこにどのような形で非接触充電装置を配置すべきなのかということだ(図1)。2番目の課題は、法規制の制限を受ける可能性があるため、これをクリアにする研究だ。例えば、WiTricityの技術は高周波を利用するため、電波法の制限を受ける可能性がある。3番目の研究課題では「i-MiEV」に非接触充電装置を組み込んだ場合、どの程度、効率的に充電できるかを調べる。
EVに向くWiTricityの共鳴型技術
米WiTricityは、Massachusetts Institute of Technology(MIT)が2006年に理論化した共鳴型と呼ばれるワイヤレス給電技術の独占的なライセンスを受け、2007年に設立されたベンチャー企業。
共鳴型は広く使われている電磁誘導とは異なる原理に基づき、電力を送電する。特長は、電磁誘導と比べて伝送距離が長いこと。数10cmの送電が可能だ。さらに送電装置と受電装置の位置ずれ、角度のずれの影響を受けにくいという特長がある。具体的には、位置ずれなどが起きたときにも、伝送効率が低下しにくい。
つまり、共鳴型非接触充電は、駐車位置のずれや、車高の違いなど、EVを充電しようとしたときに起こる課題に対応しやすい充電方式だといえる。
IHIは、今回の取り組みよりも早く、2011年6月にWiTricityと提携することを発表している。産業向け機械や回転部分のある機械などに送電することを目指しており、自動車向けの機器開発も進めたいとしていた。同社によれば、3.3kWの電力を20cm離れて効率90%以上で送電可能なことが実証できたという(図2)。
図2 IHIの試作機の外観 送電側、受電側とも50cm角である。この試作機では小型化の技術開発はまだ進めていない。3.3kWの電力を20cm離れて効率90%以上で送電可能なことが実証できたという。受電側の負荷の大きさを検知して動的に送電状態を変えており、受電側と送電側が例えば平行でないときも送電できる。
トヨタや日産も非接触充電に注力
EVと非接触充電技術を組み合わせようという動きは、三菱自動車だけではなくEVに取り組む自動車メーカーに共通するものだ。
トヨタ自動車は2011年4月にWiTricityと提携しており、その際、増資も一部引き受けていている。同社はWiTricityの技術を採用することで、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)を無線で充電できる技術の実用化と普及促進を目指している(図3)。例えば、駐車場の床下に設けた定置式充電器の上に、非接触充電対応EVを駐車して充電するという姿を描いている。
図3 トヨタ自動車が考えるワイヤレス充電の利用イメージ 駐車場の床下に設けた定置式充電器の上に、ワイヤレス充電用車載機器を搭載したEVを駐車すると、共鳴によるワイヤレス送電によって充電が始まる。ケーブルやプラグコネクタは不要であり、充電器にEVの一部を密着させる必要もない。出典:トヨタ自動車
日産自動車は、2009年7月に非接触充電システムの開発を進めていることを明らかにし、現行のリーフの次世代で搭載を目指すとしている。昭和飛行機工業と共同開発した電磁誘導方式のシステムを使った。
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