急速充電器の低価格化でEVの普及拡大、日産が半額以下へ:電気自動車
2010年末の設置台数の10倍に相当する急速充電器を2015年度末までに設置することで、電気自動車の普及を促す。設置台数を増やすために、回路技術を工夫して急速充電器の価格半減を実現した。
日産自動車が電気自動車(EV)用急速充電器の低価格化に乗り出す。低価格化をテコに2015年度末までに急速充電器5000基の販売を目指す*1)。これは2010年末時点の国内設置台数の10倍に相当する数だ。国内に続き、米国、欧州など海外での販売も狙う。
*1)電気自動車向け充電器の普及と標準化を目的とするCHAdeMO協議会によれば、2010年12月末時点で全国に設置された急速充電器は496台である。日産自動車が2010年5月時点に発表した普及目標は、全国の日産ディーラー全2200店舗に普通充電器を備え付け、そのうち200店舗には急速充電器を設置するというものだった。
日産部品販売を通じて、2011年11月から、3種類の急速充電器の販売を開始する。充電能力や対応車種、寸法などはどれも同じであり、設置場所などが異なる。
屋内設置用の「ベース仕様」の価格は現行製品(2010年5月発売のNSQC-44-A-1、147万円)の半額以下とする予定。
屋外設置用で、モノクロ液晶ディスプレイを搭載した「標準仕様」(図1)の価格は「100万円を大きく下回る」(日産自動車)という。ヒーターを装備し、耐冷仕様ケーブルを備えた屋外設置用の「寒冷地仕様」の価格は未定。
図1 日産自動車のEV用急速充電器 低価格な新型機種(左)として、屋外設置が可能な標準仕様品を示した。給電用コネクターはJEVS G 105-1993に準拠。充電器の寸法は幅380mm×奥行き665mm×高さ1840mm。現行品(NSQC-44-A-1、右)の約6割の体積になるよう小型化した。
回路設計によって低価格化
回路の構成を単純化することで急速充電器の「高品質と低価格を両立した」(日産自動車)。
具体的には、マトリックスコンバーターを内蔵する電力変換装置として用いた*2)。マトリックスコンバーターは入力した交流を直流を経由せずに直接変換する電圧変換装置である。
*2)長岡技術科学大学の協力を得てマトリックスコンバーターを急速充電器に適用した。
従来品では、まず、1次側で200Vの三相交流をコンバーターに通して直流に変換する。次に、インバーターを用いて高周波の交流に変換していた。その後、高周波絶縁トランスをはさみ、2次側で整流器を通じて交流を整流、平滑化していた。得られた直流を充電ケーブルを通じてEVに供給する。
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