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EVの爆発的な普及には何が必要? 「無線充電」だ小寺信良のEnergy Future(10)(1/4 ページ)

EVは運転しやすく乗り心地もよい。価格も手ごろになってきた。だが、誰にでも向くわけではない。充電インフラに課題があるからだ。EVの普及を加速するには無線充電が必要だという主張は正しい。Qualcommの取り組みから将来のEVの姿を予測する。

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 自動車に関してはあまり興味がない筆者だが、電気自動車(EV)の未来には興味がある。先日、新潟のあるシンポジウムに参加するため、MIAU(インターネットユーザー協会)で共同代表を務める津田大介氏所有の「エスティマハイブリッド」(トヨタ自動車)に同乗させてもらった。過去ホンダ「フィット」のハイブリッドに試乗したことはあったのだが、これぐらい大型のハイブリッドに乗ったのは初めてだった。

 快適だったのは、車内に1500Wまで使えるACコンセントがあり、かなりの電力を取れることである。同乗者4人のPCをつないでスマートフォンを充電し、モバイルルータを動かしてもまだ余裕だ。シートアレンジを変えればテーブルを出す余裕もあるし、何か災害があったときのモバイルオフィスになる。そうそう大災害が来てもらっても困るが、電力供給車としての可能性は、高く評価したいところである。

 一方でプラグインハイブリッドやEVを乗りこなそうとすると、充電インフラの問題が出てくる。自宅の庭で充電できるユーザーは構わないが、マンション住まいの方となれば駐車場も借りているわけで、そこに充電設備がなければEVなどは買いにくい。また出先で充電できるかという点が確実に分からなければ、遠出もままならない。

 これには充電インフラの大整備が必要なのだが、EVの普及と充電インフラの普及はまさに鶏と卵の関係になっており、回転が始まるには何かのキックスタートが必要だ。

 さらにプラグを使った充電には、いろいろと課題がある。まずケーブルはどれぐらいの長さが必要か。長いケーブルを、誰でも問題なく引き回せるのか。暗い中でも感電の危険なくプラグが挿せるか。あるいは雨にぬれている状態でも安全か。雪で凍り付いたプラグを果たして挿し込めるのか。

 これらの問題を解決する手段として期待されているのが、無線充電(ワイヤレス充電)である。

Qualcommと自動車産業の深い関係

 Qualcommといえば、通信の世界ではモバイル機器用プロセッサ「Snapdragon」や、CDMA携帯電話用チップ供給メーカーとしてよく知られている。放送の世界では、米国のモバイル放送「MediaFLO」の開発を手掛け、日本でもマルチメディア放送の方式採用を目指したが、最終的に採用には至らず、米国でのサービスも2011年3月に終了した。放送ではうまくいかなかったが、無線通信企業としてはかなりの大手であることには違いない。

 そのQualcommが2011年11月8日、EV向け無線充電で知られる企業HaloIPT*1)を買収し、同事業に弾みを付けることとなった。

*1) 同社はニュージーランドUniversity of Aucklandの研究者が立ち上げたスピンアウト企業。なお、HaloIPT買収以前からQualcommは自動車向け無線充電技術の研究開発を続けていたという。

 Qualcommでこの技術を担当する、European Innovation部門でエグゼクティブバイスプレジデントを務めるアンドリュー・ギルバート(Andrew Gilbert)氏が来日し、日本の報道機関向けに説明会を開催した(図1)。今回はこのときの説明資料をベースに、無線充電システムの未来について考えてみたい。


図1 Qualcommのアンドリュー・ギルバート氏

当社は研究開発に毎年25億米ドルを費やしている。そのうち3分の1が中長期的な取り組みであり、今回の無線充電も中長期的に取り組んでいる。

2020年には自動車のうち10%がEVになるという見方に同意する。使いやすく効率がよい無線充電が普及すれば10%を超えるだろう。

だが、標準化と相互運用性が無ければ無線充電は広がらない。これはこれまでのモバイルビジネスと同じだ。

Qualcommは装置を製造するのではなく、標準化で貢献し、開発した技術を自動車メーカーなどにライセンスする予定だ。

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