自前主義からオープンソース活用へ、トヨタが車載情報機器の開発方針を転換
The Linux Foundationが開催した自動車アプリケーション向けLinuxのイベント「Automotive Linux Summit」において、トヨタ自動車で次世代車載情報機器の開発トップを務める第1電子開発部主査の村田賢一氏が講演を行った。
The Linux Foundationが開催した自動車アプリケーション向けLinuxのイベント「Automotive Linux Summit」(2011年11月28日、パシフィコ横浜)において、トヨタ自動車で次世代車載情報機器の開発トップを務める第1電子開発部主査の村田賢一氏が講演を行った(図1)。同講演で村田氏は、「トヨタ自動車が考える自動車の将来像を達成するために、これまでの自前主義から脱却し、Linuxに代表されるオープンソースソフトウェアを積極的に活用していく」と述べた。
村田氏は、今後の自動車において利用可能になる機能として、リモートサービス、ITS(高度道路情報システム)、利便性の向上、スマートグリッドの4つを挙げる(図2)。そして、「これらの機能を実現するためには、ICT(Internet Communication Technology)をいかに活用できるかが鍵になる」(同氏)と強調する。
これまでの自動車業界において、カーナビゲーションシステムなどの車載情報機器のソフトウェアは、各企業が自前で開発するプロプライエタリなものが一般的だった。村田氏は、「車載情報機器が自動車のローカルデバイスである分にはそれでも問題はなかった。しかし、今後は車載情報機器が無線通信によりインターネット接続されることは当たり前になってくる。そういった車載情報機器の機能向上を果たすためにはICTを活用する必要があるが、自動車業界はICTに関するノウハウを持っていない。自前主義のままでは、急速な進化を続けるICTをキャッチアップすることは極めて困難だ」と語る。
その解決策として同氏が示したのが、「Linuxに代表されるオープンソースソフトウェアの積極的な活用」である。ICTで広く利用されているオープンソースソフトウェアのリソースを自動車向けに最適化することにより、先述したような機能を持つ、次世代の車載情報機器を早期に実現できるようになるわけだ。
村田氏は、「例えば、Linuxを車載情報機器で利用しやすくするには、ブート時間の短縮など、車載機器の組み込みOSとして必要となる仕様についてLinuxコミュニティに考慮してもらう必要がある。もちろん、自動車業界からもLinuxコミュニティに積極的に働き掛ける必要があるだろう」と述べている。
そこでトヨタ自動車は、2011年7月からLinux Foundationのゴールドメンバーとして参加することで、Linuxコミュニティと自動車業界の関係を深めようとしている。また、同社とICTとの関わりでいえば、Microsoftやsalesforce.comなどIT企業との連携も進めている(関連記事)。同年11月にはIntelと次世代車載情報機器に関する提携を発表した。
村田氏は、ソニーで民生用機器のソフトウェアプラットフォームや「PlayStation 3」のOSである「Cell OS」の開発を担当したのち、2008年にトヨタ自動車に転籍したという異色の経歴を持つ。「自動車業界よりもIT業界に近い人間」と語る同氏が、トヨタ自動車で次世代車載情報機器開発のチーフエンジニアを務めていることからも、同社における自前主義からオープンソース重視への方針転換が見てとれる。
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