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品質を「見える化」するために必要な統計思考とは実践! IE:現場視点の品質管理(7)(2/2 ページ)

品質の状態を実証的・論理的・体系的に正しく把握するための基礎力を高めるにはどうしたらよいでしょうか? 今回は統計の考え方と可視化の効能をおさらいします。

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統計的な考え方を身に付けるために

2つのバラツキは似て非なるもの

 バラツキを一言でいうと、測定した数値などが平均値や標準値の前後に、不規則に分布した不ぞろいの程度のことをいいます。そのバラツキの中にも、「管理されたバラツキ」と「異常によるバラツキ」の2つの意味を持つバラツキがあります。

 同じ品物をたくさん作るとき、寸分の狂いもないものは、なかなか作ることが難しいものです。例えば、直径10mmのピンをたくさん作るにしても、全てのピンが正確に10mmに出来上がらず、多少の違いが生じてしまうことは、ごく一般的なことです。

 これは、全く偶然によるバラツキで、モノづくりの中でこれを避けることは難しいものです。バラツキの原因を調べてもあまり意味のあることはなく、許容されるバラツキとして「管理されたバラツキ」といいます。

 次に、例えば、材料の品質が悪いとか、作業が間違ったというような原因で、同じものが作れないことがあります。このようなバラツキは、「異常によるバラツキ(管理されていないバラツキ)」であって、これは人為的に取り除く(バラツキを小さくする)ことができます。

 このような2つの意味を持つバラツキが入り乱れて、全く同じものができない結果となって現れてきます。私たちは、データによって、いろいろな現象を観察していますが、多くのデータの中には、必ずバラツキが伴うということを常に忘れてはなりません。

母集団とサンプルの意味

 母集団(Population/Universe)とは、統計学の基礎概念の1つで、ある調査を行って何らかの結果を得ようとする調査対象の条件に当てはまる「集合」のことを指します。つまり、全数調査の調査対象に当たる集団のことといえます。統計は、標本(サンプル)によって得られた知識を、母集団へ帰属させる論理操作の体系といえるでしょう。

 例えば、母集団とは、何らかの対象として考える特性(ピンの寸法、鉄板の厚み、線材の抗張力、コンデンサの容量など)を持った個体の集まりを指します。毎日1000個以上生産されている品物があって、需要者がそのうち1000個だけを必要として、これを対象に考えるならば、この1000個が母集団です。

 しかし、生産者が、ある日に生産された1日分の製品の様子を知りたいときには、1日の製品を、それを加工した機械別に分けた幾つかの母集団ができることになります。1カ月間の製品の様子を知りたいときは、1カ月間に生産した製品の全てが1つの母集団となります。このように母集団が決まれば、この母集団の平均値やバラツキを求めることが必要になってくるわけです。

 また、材料や部品の寿命試験や強度試験のように、試験のためにそのものを破壊するようなときには、全てのものを試験することはできません。そこで、母集団の一部からサンプル(試料)を抽出して測定・観測し、これから母集団の性質を知ろうとすることになります。

 このように、抽出された母集団の一部をサンプルといいます。私たちが実際に調べるのは、このサンプルとなるわけですが、本当に知りたいことは、サンプルの背後にある母集団の性質であるということを忘れてはなりません。

統計的な考え方を身に付けよう

 データを集めたとしても、それを統計的に意味がある形で把握できなければ意味がありません。それでは、統計的な考え方とはどういったものでしょうか。

個々の数値から平均・偏差を求める

 私たちが母集団の性格を知ろうとしたときに、1つの方法として、この母集団の個々の性質、すなわち測定値を集め、この測定値の分類を行って、平均値や標準偏差などを算出し、この母集団の性質を判断します。

サンプルから推定する

 母集団の総個数から判断して、全数の測定をするには非常に多大な作業量となり経済的に得策ではなかったり、破壊しなければ測定ができないような場合は、全数の測定は不可能なことがあります。この場合は、試料(サンプル)として所定の方法で必要数を抜き取り、この試料の平均値を算出して代表値としたり、あるいは算出した標準偏差から、測定していない母集団の性質を判断する方法を用います。

 この2つの例では、前者は非常に多くのデータを処理し、正確な試料が得られることが分かります。後者は試料数が少なくて、あまり正確ではないように思われます。

統計的に有意な情報を得る

 この両者の方法は、母集団の性格をつかむために、それぞれにデータを取って解析したのですが、単に平均値とバラツキのみの計算を行ったのであれば、これは十分な解析がなされたとはいえません。例え試料数が少なくても、母集団を推定するために必要な統計的手法が分かれば、単にバラツキのみの計算ではなく、このバラツキを尺度に統計的方法に基づいて、母集団の品質特性に対する良否の判定が可能となるわけです。

 これは、前者の方法のように全数測定を行うというような、余り経済的とはいえない方法や、あるいは全数測定が不可能な場合でも、そのロットの品質特性についての判定が可能となります。この意味は、必要最小限の試料でも、統計的方法によれば必要な結果が十分に得られるということです。

 この例から、私たちは統計的な考え方に従って、いろいろな意思決定を行うということは、単にバラツキの計算をすることではなく、母集団の性格を知るためにそのバラツキを積極的に利用することが必要であるということがいえます。要約すると、私たちが、統計的に品質を考えるときに、主として、次のことを問題にしなくてはならないということです。

  1. 私たちが測定などで得るデータは、全てバラツキを持っている
  2. 測定結果は、全ての場合において、平均値とバラツキの両方を考えて判断しなければならない
  3. 一つずつの個々の製品でなく、全体(集団)としての品質を問題にしなければならない

時系列的なものの見方

 数多くのデータを取って、これを層別してみると母集団のバラツキ(ロットの性質)がよく分かります。しかし、製造工程の管理や改善を行うためには、製造過程における工程の変動を十分に把握し、工程の変化に応じて適切なアクションを行っていかなければなりません。そのためには、時間の経過に伴う、工程の変化を見極めていく必要があります。

 しかし、現場のデータを見てみると、貴重なデータが時系列的な見せ方をしていないために、せっかく取ったデータが生かされていない例が散見されます。例えば、品質の状況から工程に関する貴重な情報を取り出すためには、データを点の動きとして時系列的に見る方が一般にはいろいろな判断を行う場合に効果的で、その1つの方法として、品質特性が各製造ロットで、どのように推移していくかを図に表した管理図などが大きな役割を果すことがあります。

 このように、現場の品質管理においては、時間のファクターを入れた工程の動きを見る目を養っていくことが重要なのです。

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 ここまでで、統計的に問題を把握するためのものの考え方を整理しました。次回は、現場の管理者が心得ておくべき品質管理手法の概要を紹介し、次に手法の詳細を解説していきます。お楽しみに!

⇒前回(第6回)はこちら
⇒次回(第8回)はこちら
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⇒製造マネジメントフォーラム過去連載一覧


筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)


日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。


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