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IEにおける「品質管理」の本質と歴史的経緯実践! IE:現場視点の品質管理(2)(2/2 ページ)

IEにおける品質管理のあり方とその本質とは? 歴史的背景を見ながらその意義に迫ります。

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2.3 設計品質(狙いの品質)と適合の品質(出来栄えの品質)

 一般に考えられる品質については、前回の「1. 品質管理を行わなければならないのは何のため?」で説明しましたが、工場でいう品質にはさらに別の角度からの見方が必要です。すなわち、製品を設計して製造する際、設計上求める品質(これを“狙いの品質”という)と適合の品質(これを製品の“出来栄えの品質”という)の2つがあります。その内容を次に示しておきました。

  1. 「設計品質(狙いの品質)」とは、消費者の要求品質に対して、企業の設計技術や生産能力、経済性を加味して設計を行う上で狙った品質であって、設計図面上では、「狙いの品質」を表現したものです。そして、この品質は、カタログに記載される品質でもあります
  2. 「適合の品質(出来栄えの品質)」とは、設計品質を目標に製造された結果、作り出された製品の品質をいいます。製品の品質は、消費者の要求品質や設計品質に対して、どのくらいの適合度であるかという尺度でその品質の良否が判断されます。

 この2つの品質についての関連は、「図4 設計品質と適合品質の関連」に示しておきましたが、品質管理における設計部門と製造部門の役割を間違えないようにしないと、現場の品質管理活動がスムーズに実行できないことが生じますので注意が必要です。

図4 設計品質と適合品質の関連
図4 設計品質と適合品質の関連

2.4 品質管理と統計的な考え方

 「統計的品質管理(SQC:Statistical Quality Control)」の中の統計的手法は、あくまで品質管理の手段であることを忘れてはなりません。私たちは、品質管理と統計的品質管理とを区分して考える必要はないわけですが、その基本となる考え方と目的は同じだからです。ただ、私たちの犯しやすい誤りは、“統計的手法=品質管理”と考えてしまうことにあって、このことが管理の目的と手段を混同しやすい原因であることは確かなようです。いわゆる、“手法”は、あくまでも手段であって、目的そのものではないのに、“手法”そのものにのめり込んで、目的と手段のケジメを見失ってしまう現象です。

 すなわち、品質面における管理というのは、統計そのものが目的ではなく、不具合や欠陥を科学的に取り扱うということが狙いであるわけですから、統計そのものが目的ではなく、それらの不具合や欠陥を管理の網の目から逃さないように、確実にフィードバックのできる手段と組織で処理することが重要なことなのです。

 以上のことは、統計手法の過信による行き過ぎや、統計手法は品質管理の全てのことに対して効果的と思い込むことに対する反省ですが、この統計的な考え方、すなわち科学的な判断を軽視することは、それにも増して危険であることも忘れてはなりません。工場のいかなる部門の人たちも、それぞれの責任分野で直面する品質上のいろいろな問題に対処しようとするときは、現状をよく調査し、事実から科学的な正しい判断を下していくことが必要です。このようなとき、ヒストグラム、パレート図、管理図、抜き取り手法、実験計画法、相関分析法などの統計的な手段は、その解決の一助となるものですが、これらの手段を有効に活用して問題を発見し、解決することが望ましく、それを具体的に実行していくことが、“品質管理”なのです。

 次回(第3回)はこちら。

⇒前回(第1回)はこちら
⇒次回(第3回)はこちら
⇒連載「実践! IE:現場視点の品質管理」バックナンバー
⇒製造マネジメントフォーラム過去連載一覧


筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)


日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。


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