雪印メグミルクは自社開発DXで「もう疑わない」生産現場へ、年間2000時間削減:イノベーションのレシピ(3/3 ページ)
手作業の計量によるヒューマンエラーに悩む製造現場をいかに変革するか。雪印メグミルクのDXサービス「Totonoworks」は、人の“判断”をシステム化することで、ミスによる損失100%減、作業時間約80%減を実現した。自社工場の課題解決から製造業全体の底上げへと挑む軌跡を追う。
食品製造ならではの悩みへ――実務経験が生む伴走支援
池上製造所での成果を受け、プロジェクトチームは自社の課題解決から事業化へと舵を切った。その背景には、食品製造業界全体が抱える共通の悩みがあったという。
食品製造業の国内従業者数は112万2868人と製造業の中分類で最多である一方で、有効求人倍率は他製造業の約2倍となる3.10倍に達し、人手不足が深刻化している。同業他社などとコミュニケーションを取る中で、どの現場も人手不足やヒューマンエラー、紙運用の限界といった池上製造所と同じ課題に悩まされている、と柊氏は実感している。
課題解決に向けてITツールを導入する企業は多いが、一般的な電子帳票サービスでは現場に定着せず、効果が限定的になりがちだ。そこで「Totonoworks」は、自社で課題解決に取り組んだ実務メンバーが直接顧客の現場に入る「伴走型支援」をサービスの柱に据えた。
支援は、目安数日間かけて「現場を見る」フェーズから始まる。実際の作業と帳票を確認して抜け漏れのリスクを把握し、アプリ設定(目安1.5カ月)、レクチャー(目安1カ月)へと段階的に進む。新任作業者や外国人労働者でも同じように使える状態を作り、多能化につなげるとともに、最終的には支援担当者がいなくても現場の改善が自走する状態を目指す。
デジタル化の素地を作り、食品業界全体の底上げへ
雪印メグミルクは、2026年10月より乳業メーカーや食品製造業を中心に日報アプリの提案/導入を進め、現場での知見を蓄積したのち、2027年4月にアプリをリリースする計画である。
数年後をめどに対象となる顧客セグメントやアプリの機能を順次拡張し、より幅広い製造業における生産性向上の実現を目指している。システムをただ導入して終わりにするのではなく、自社の製造現場で培ってきた改善ノウハウを業界全体の力に変え、製造業の持続的な発展に貢献していく方針だ。
今後の展開と現場への思いについて、中島氏は「Totonoworksを通して、デジタル化とはどういうものかを実践で身につけてもらえれば、その先のさらなる改善や、別の領域におけるデジタル化の素地づくりになるのではないかと考えています」と語る。
食品製造現場は品質を第一に守るがゆえに、日々の手作業による苦労が絶えない。柊氏も、「われわれの仕組みは現場発だからこそ、真に現場で役立つ形で提供することを目指しています。同様の課題を抱える他社を支援し、日本の食品業界全体の底上げに貢献することが最大の目標です」と力を込める。
食品メーカー自身が現場の泥臭い視点から生み出したこのDXサービスは、食品製造業が直面する課題を解決し、製造業全体の持続的な発展を支えるための新たな基盤になっていくという将来像も見据えているのだ。
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