「マツダの本気」が日本製鉄を動かした、鋼板調達の新モデル:ITmedia Virtual EXPO 2026 冬 講演レポート(1/2 ページ)
マツダは、日本製鉄との共創で取り組んだ調達の革新により、新型「CX-5」における鋼材重量とコストの削減を実現した。本稿では、「ITmedia Virtual EXPO 2026 冬」において、「マツダが挑むサプライチェーン構造変革」と題して行われた講演の一部を紹介する。
アイティメディアが運営する産業向けメディアのMONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryは2026年2月10日〜3月12日の約1カ月間、製造業向けの国内最大級のオンラインイベント「ITmedia Virtual EXPO 2026 冬」を開催した。イベントでは、製造業が抱える課題の解決や、今後のモノづくり戦略を考える上での具体的なヒントを提供している。
本稿では、「マツダが挑むサプライチェーン構造変革」と題してマツダ 常務執行役員 購買・物流・コスト革新担当、生産管理・物流本部長の鷲見和彦氏が行った講演の一部を紹介する。
マツダは車両生産で使用する鋼板の調達領域において、従来の価格競争発注から脱却し「クルマ一台分」を集約発注する手法へと変革した。それらを適用した新型CX-5の車両開発では、鋼材重量の削減とサプライチェーン最適化によるコスト削減を実現。日本製鉄と挑んだ、構造改革への取り組みの背景とその成果について解説した。
サプライチェーン改革で「構造的原価1000億円の削減」へ
マツダがサプライチェーンの構造改革に取り組む背景には、2030年経営方針で提唱している「ライトアセット戦略」の存在がある。これは、資産の負担を抑えつつその活用度を最大化し、スモールプレイヤーとしての競争力を高めるアプローチだ。
この戦略の下、同社は経営のレジリエンス強化に向けて大規模な事業改善活動を進めている。財務面では、サプライチェーンとバリューチェーンの最適化による「構造的原価1000億円の削減」に加え、業務の選択とDX(デジタルトランスフォーメーション)活用による生産性向上を通じた「固定費1000億円の削減」を目標に掲げている。
鷲見氏は、「不透明な市場環境下においては固定費の上昇を抑え、パートナーと共に従来の調達構造そのものを根本から変えなければならない。だからこそマツダは、サプライチェーン全体を俯瞰(ふかん)して、減産への抵抗力と原価低減力を備えた『強靭なサプライチェーン』の構築に挑んでいる」とその意義を強調する。
マツダが掲げるサプライチェーン構造変革の目標は、サプライチェーン(供給網)におけるあらゆる「ムリ、ムラ、ムダ」をなくすことだ。従来の多重構造化したサプライチェーンでは、中間在庫の増加やリードタイムの長期化、BCP(事業継続計画)対応に備える余分なコストが発生していた。また、上流で決定したデザインを後工程が単に製造するだけのバリューチェーンでは、無駄な設備投資や冗長な供給網を招きやすいという課題があった。
これらを解決するため、マツダは調達の在り方を従来の「競合」から「共創」へと大きく転換した。案件ごとに企業を競合させる「焼畑農業」的な発注を見直し、デザイン検討の初期段階からサプライヤーと協調するアプローチである。
価格競争型の発注に限界、日本製鉄との共創へ
その象徴的な事例が、日本製鉄との鋼板調達における共創活動だ。
従来の調達手法では、マツダが要求性能を考慮した鋼種(普通鋼、ハイデン鋼、冷延、熱延)を決定した上で価格競争型の発注を行っていた。その結果、部品ごとに複数のメーカーが混在し、すり合わせや手戻りに多大な工数が発生していた。一方のメーカー側も、受注総量を確保するために、不得意領域や利益率が低い鋼板まで引き受けざるを得ず、双方がコスト削減の限界に直面していた。
価格競争の限界と、技術活用の壁を乗り越えるため、マツダが踏み切ったのが「鋼板の買い方変革」だ。その具体的なアプローチは大きく2つ、「調達単位の変更」と「調達時期の変更(前倒し)」である。
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