雪印メグミルクは自社開発DXで「もう疑わない」生産現場へ、年間2000時間削減:イノベーションのレシピ(2/3 ページ)
手作業の計量によるヒューマンエラーに悩む製造現場をいかに変革するか。雪印メグミルクのDXサービス「Totonoworks」は、人の“判断”をシステム化することで、ミスによる損失100%減、作業時間約80%減を実現した。自社工場の課題解決から製造業全体の底上げへと挑む軌跡を追う。
確認、記録、判断をデジタル化、属人的なミスを防ぐ仕組み
ヒューマンエラーをなくすために、雪印メグミルクが導き出した答えが「人の判断に依存しない形」への移行であった。
世の中には一般的な電子帳票サービスが存在するが、それらは主にペーパーレスを目的としている。既存の紙の日報をデジタルに置き換えることは容易であるものの、業務改善の効果は限定的だ。同社が求めていたのは、ミス防止と作業効率化といった、本質的な業務プロセスの改善につながる仕組みであった。
最大の特徴は、作業手順と記録業務を一体化し、作業者を正しい手順へとナビゲートする点にある。製造現場の作業は、「確認」「記録」「判断」というステップの繰り返しで成り立っている。開発に携わった同グループの中島健一氏は、このシステムのアプローチについて次のように語る。
「当社では作業のステップを『チェック、レコード、ジャッジ』と呼んでいます。これまでは、紙に定められた項目を、五感を使って確認し、手書きで記録し、それが基準内に入っているかどうかを人が判断していました。この「確認」「記録」の部分を、デジタルツールを活用して簡素化させ、『判断』の部分を、全てタブレット上のシステムにさせるのがわれわれのやり方です」
具体的なナビゲーションの手順として、まずタブレット端末上で2次元バーコードなどを用い、正しい原材料か、使用期限内のロットかを照合する。また、工場内の電子てんびんなどとの連携も可能だ。てんびんとシステムを連携させ、画面上で指定された量に対して誤った分量を載せた場合、エラーとなってロックがかかる仕様になっている。この機能について中島氏は、「ミスがあればその先の作業に進めない、つまりほぼミスをすることが不可能な仕組みになっています」と説明する。さらに、細かな画面展開を施していることで、作業者は指示通りに画面を押していけば作業が完了する。
これまで紙を見ながら複数人で手書きのダブルチェックを行っていた作業は、タブレットの画面指示に従うことで、1人で確実に進められるようになった。人の経験や記憶、五感に頼っていた照合作業をデジタルでつなぎ、属人的だった「判断」を人間に依存しない形へと移行したのだ。「現場の作業員からも『システムがナビゲートしてくれるため、精神的に楽になった』という声が上がっています」と柊氏は語る。
迷いや不安なく、安心して作業できる環境が整ったことで、池上製造所では数値的成果も表れ始めた。2021年度と比較した2024年度の実績では、ミスによる損失(コスト・対応時間)を100%削減することに成功したという。また、紙媒体での確認や日報集計時間を約80%(年間約2000時間)削減している。さらに、システムが作業者を正しい手順へと導いてくれるため、人材育成にかかるOJT時間も約50%短縮できた。
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