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付加価値の35%が固定資本減耗に、日本の製造業はなぜ利益が残らないのか:小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(52)(3/3 ページ)

ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は、日本の製造業の付加価値分配について紹介します。

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日本製造業の付加価値分配の特徴とは?

 最後に、各国の付加価値分配の特徴を可視化してみましょう。図8は2024年の営業余剰・混合所得(純)を対付加価値比で比べたものです。雇用者報酬の高い順に並べています。

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図8:2024年の製造業における対付加価値比による営業余剰・混合所得(純)の国際比較[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成

 日本は、先進国の中で労働者への分配比率が低い状況にあることが確認できます。かといって、企業側の利益が多いかといえば、そうでもありません。図8を見ても、日本製造業の営業余剰・混合所得(純)は先進国の中でも低い水準です。

 一方で、日本の固定資本減耗は35.0%と先進国の中でもかなり高い水準となっているのです。これが先ほど述べた、投資が多いことによってかえって労働者や企業自身への取り分が圧迫されているという状況を可視化したものとなります。

 例えば、ハンガリーは、日本と同じくらい固定資本減耗が多いですが、雇用者報酬へ回す分が多く、企業の取り分がかなり少ない特徴があります。逆に、オランダについて見てみると、雇用者報酬は日本よりもやや少ないですが、固定資本減耗が少なく、企業の取り分が多いという特徴があります。

 オランダは高所得国としても知られていますね。雇用者報酬の分配率が低くても、稼ぎ自体が多いので、所得水準が高いという関係性です。そして、企業への分配も多いという製造業の環境が推察されます。ASMLに代表されるような、独自の強みのある高付加価値産業が根付いている国といった印象です。

 一般的に、固定資産への投資は非常に高額ですが、その分だけ高い生産能力を複数年にわたって得ることができます。投資の時点では、金融資産と固定資産の置き換えという処理がなされ、1年分の消費額として費用計上されるのが固定資本減耗(減価償却費)です。日本の場合は、付加価値が増えない中で、この固定資産の維持負担が大きく、かえって取り分が減っているという関係性です。

 日本の製造業は規模の経済を追い、価格競争ばかりとなることで、高付加価値な事業へと投資が振り向けられてこなかったと指摘されることもあるようですが、このような統計データからもうかがえます。

 国際比較が、自国の事業環境や取引慣行を客観的に理解する助けとなる一例ではないでしょうか。

⇒記事のご感想はこちらから
⇒本連載「小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ」の目次はこちら
⇒前回連載の「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら

筆者紹介

小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役

 慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。

 医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。

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