再分配効果が小さい日本の悲しい現状、再分配後の相対的貧困率はG7で2番目に:小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(38)(1/3 ページ)
ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は相対的貧困率の国際比較を行います。
前回は日本の「相対的貧困率(Poverty rate)」について紹介しました。今回はOECD Data Explorerから、相対的貧困率の国際比較を行います。
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市場所得の相対的貧困率の国際比較
相対的貧困率は、所得が貧困線(等価可処分所得中央値の半分)に満たない人の割合です。この数値が高いほど、生活に困窮する人の割合が高いことを示します。相対的貧困率は、国際的に共通した基準で定められており、OECD(経済協力開発機構)の統計データでも各国のデータが公表されています。
今回は、OECD各国の相対的貧困率や、貧困の深さを表すとされる貧困ギャップについて国際比較していきます。今回の対象は18〜65歳の現役世代とします。
まず、再分配前の所得である市場所得(Market Income)における相対的貧困率の時系列推移から見ていきましょう。図1は主要先進国の市場所得における相対的貧困率の推移です。
市場所得は社会保障負担や社会保障給付による再分配前の所得です。所得の総額における貧困の度合いを表したものになります。低所得な労働者が多かったり、資産運用による財産所得に差があったり、失業者が多かったりすると、この水準は高くなります。
主要先進国では2000〜2010年代にかけてやや上昇傾向となっている国が多いようですが、その後は維持または低下傾向となっています。
その中でも日本(青)は相対的に水準が低く、2010年代以降の低下傾向も大きいようです。日本は主要先進国の中では、市場所得における貧困率は低い方だといえます。
一方で、フランスは主要先進国の中では相対的に水準が高いといえます。韓国は水準は低いですが、上昇傾向であることが確認できます。
図2は市場所得における相対的貧困率についての2021年の国際比較です。
先進国で構成されるOECDの中では、フランスやイタリア、米国が相対的貧困率が高水準となっています。一方、日本は15.7%で、先進国の中でもかなり低い水準です。
日本は業種や職種による給与水準の差が小さく、失業率が低いことも大きく影響していそうです。男性労働者の所得格差はやや拡大していますが、女性労働者が増え、世帯全体の所得水準が向上していることも格差縮小に寄与しているかもしれません。
ここではまず、再分配前の市場所得では日本の現役世代の相対的貧困率は比較的低いということが確認できました。
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