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再分配効果が小さい日本の悲しい現状、再分配後の相対的貧困率はG7で2番目に小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(38)(2/3 ページ)

ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は相対的貧困率の国際比較を行います。

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可処分所得の相対的貧困率の国際比較

 続いて、社会保障給付や社会保障負担、税による再分配後の可処分所得における相対的貧困率を確認していきましょう。図3が主要先進国の可処分所得における相対的貧困率の推移です。

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図3 可処分所得における18〜65歳の相対的貧困率の推移[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者が作成

 日本は、近年では米国に次ぐ水準となっており、イタリアと同程度となっています。市場所得の相対的貧困率とは異なり、主要先進国の中では高めの数値で推移していることが分かります。

 一方で、市場所得の相対的貧困率ではかなり高い水準だったフランスは、可処分所得の相対的貧困率では主要先進国で最も低い水準で推移しています。ドイツはそのフランスよりも低い水準だったようですが、徐々に上昇し、近年ではカナダ、韓国、英国を上回っています。各国で傾向が異なり非常に興味深い推移となっています。

 図4が2021年の可処分所得における相対的貧困率の国際比較となります。

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図4 可処分所得における18〜65歳の相対的貧困率の国際比較(2021年)[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者が作成

 日本は12.7%でOECD32カ国中8番目、G7でも2番目とかなり高い水準となっています。日本の現役世代では、先進国の中でも困窮する人の割合が高いといえます。

 市場所得で最も相対的貧困率の高かったフランスは、再分配後の可処分所得では32カ国中27番目とかなり低い水準となっているのが印象的です。

 市場所得では貧困率が低く、可処分所得では相対的に高くなる日本とは好対照な傾向が見られます。以前ご紹介した所得格差(ジニ係数)でも同様の傾向でした。

 ドイツや英国もOECDの平均値をやや超える水準となっています。

相対的貧困率の再分配効果の国際比較

 続いて、再分配によって貧困率がどの程度低減されたかを示す再分配効果について確認していきます。

 再分配効果は、市場所得における相対的貧困率から、可処分所得における相対的貧困率を差し引いた数値とします。

  • 再分配効果 = 市場所得の相対的貧困率 − 可処分所得の相対的貧困率

 図5が相対的貧困率の再分配効果の国際比較です。

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図5 相対的貧困率における18〜65歳の再分配効果の国際比較(2021年)[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者が作成

 フランスが15.8%と非常に大きな水準となっています。再分配によって多くの人が貧困状態から脱していると解釈できますね。

 一方で、日本は3.0%と非常に低い水準です。現役世代では困窮する世帯に向けての生活保護などの制度の他に、児童手当や失業保険なども再分配に含まれるはずですが、その効果が薄いということがいえます。その結果、可処分所得の相対的貧困率は、図4で見た通り、かなり高い水準となっているわけです。

 フランスやイタリアは、もともと失業率が高いことでも知られています。その代わり、再分配によって生活困窮者を減らしていると考えると、日本との社会システムや仕事に対する考え方が随分と違うことがうかがえます。

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