日本の時間当たりの賃金は高いのか? 平均時給を国際比較してみる:小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(21)(1/2 ページ)
ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は「平均給与」に注目します。
平均給与ではなく「平均時給」を調べてみよう
今回は労働者の平均時給についてのデータをご紹介します。前回は、年収換算の平均給与を国際比較してご紹介しましたが、各国で年間の平均労働時間が異なりますので、時給換算で比較するとより各国の違いが明確になるかもしれませんね。
今回参照するデータは、OECDのGDPに関する統計(Gross domestic product)と、労働者数に関する統計(Population and employment by main activity)です。
平均給与の計算式でご紹介しましたが、GDPの分配面には雇用者への賃金・俸給(Wages and salaries)が含まれます。個人事業主も含めた企業側に分配されるのが営業余剰・混合所得(Operating surplus and mixed income)です。
雇用者(Employees)とは企業に雇用されている労働者で、個人事業主(Self-employed)とは区別されます。
賃金・俸給は雇用者に支払われる対価ですので、これを雇用者数で割れば、雇用者の平均給与となりますね。OECDが公表している平均給与は、さらにパートタイム労働者がフルタイム労働者と同程度の時間働いたと見なして調整を加えています。
同様に、賃金・俸給を雇用者の総労働時間で割れば、雇用者の平均時給を計算できることになります。
- 平均時給=賃金・俸給÷雇用者の総労働時間
今回はこのように計算された平均時給について、各国の状況を国際比較してみます。まずは、日本の平均時給の推移から眺めてみましょう。
実質値が名目値をずっと上回る状況が続く
図1は、日本の平均時給について、上式で計算された名目値(青)と、物価変動の影響を除外した実質値(赤)の推移です。
平均時給の名目値は1997年に2378円に達した後、減少傾向が続き、2013年あたりから緩やかに上昇しています。2022年では2488円となり、やっと1997年の水準を上回ったことになります。
その1997年を基準に実質値を見ると、横ばい傾向が続いた後、2015年くらいから緩やかに上昇していますね。2022年の実質値は2586円です。2021年から2022年にかけて名目値は上昇していますが、実質値は減少しています。これは、名目値の上昇以上に物価が上昇したためと読み取れます。
一般的な国では、名目値より実質値が高くなるものなのですが、日本の場合は1997年以降デフレが続いたため、1997年基準で計算すると実質値の方が高い状況です。1997年当時の物価で換算すれば、2614円の平均時給に相当するということになります。
いずれにしろ、日本の平均時給は減少・停滞傾向が長期間続きましたが、2010年代から緩やかに上昇傾向となっているようです。
最低賃金が1000円を超えるかどうかといった水準ですが、全労働者の平均時給が2500円くらいというのは意外と高いと感じる人も多いかもしれませんね。
2000年代中頃からOECD平均値を下回り始めた日本
続いて、この平均時給について、ドル換算した数値で国際比較してみましょう。ドル換算する場合は、為替レート換算と購買力平価換算の2通りの見方があります。
まずは為替レート換算値から見ていきましょう。為替レートでドル換算すると、為替変動も含めた国際的な金額の水準を比較することになります。
図2が主要先進国の平均時給について、為替レート換算値の推移です。為替レートの変動により各国でアップダウンしていますが、全体的な傾向をつかめれば良いと思います。
日本(青)は1990年代に高い水準に達した後、停滞傾向が続いていますね。1995年にピークとなっていますが、この当時は米国やドイツを上回る水準でした。
ただ、停滞が長く続いている間に2000年代初頭には米国やドイツ、フランス、英国に、中盤頃にはカナダ、イタリアに抜かれOECDの平均値を下回るようになります。近年ではOECDの平均値を下回り続け、イタリアより少し上の水準ながらも、他の主要先進国との差が大きくなっていますね。2022年にはイタリアを若干下回ります。
図3は2021年のOECD各国の平均時給を比較したものです。日本の平均時給は22.3ドルで、OECD33カ国中18位、G7中6位で、OECDの平均値25.8ドルを下回ります。米国が40.5ドル、ドイツが34.5ドルですので、大きな差がありますね。
ドイツやフランス、英国は年間当たりの水準よりも、時間当たりの水準の方がかなり高くなる傾向になります。逆に、東欧諸国は時間当たりの水準の方が低くなります。ドイツやフランスは平均労働時間が日本より短く、東欧諸国や新興国は日本より長い傾向にあります。そのため、時間当たりで見るとその違いが数値として現れる事になります。
どうやら日本は、国際的に見た時間当たりの対価も、先進国の中では低いことになるようです。
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