ロタキサン構造を活用しエラストマーを強靭化、破断エネルギーを最大約20倍に:研究開発の最前線
千葉大学は、力が加わると輪が軸から抜けるロタキサン構造をエラストマーの架橋点として利用し、材料を強靭(きょうじん)化する新たな分子設計指針を確立した。ごく少量のロタキサン架橋を導入するだけで、破断エネルギーを最大約20倍に向上させることに成功した。
千葉大学は2026年9月1日、東京科学大学と共同で、力が加わると輪が軸から抜けるロタキサン構造をエラストマーの架橋点として利用し、材料を強靭(きょうじん)化する新たな分子設計指針を確立したと発表した。
ロタキサンは、リング状分子の輪の中を棒状分子が通り、その両端が大きな分子で固定されている分子集合体だ。この構造を利用した架橋剤「ロタキサン架橋剤」を用いて作成した構造や技術は、ロタキサン架橋と呼ばれる。
力が加わった際の輪の抜けやすさを制御することに成功
ゴムに代表される、柔軟でよく伸びる材料であるエラストマーは、自動車、産業、医療など幅広い分野で利用されており、次世代機能材料への応用に向けて、より壊れにくく強靭な材料の開発が求められている。
その手法として、力を受けた際にエネルギーを逃がす「犠牲結合」が注目されている。しかし、従来は犠牲結合の切れやすさだけを変えることが難しく、それが材料全体の強靭性に与える影響を明確にすることは困難だった。そこで同研究では、末端構造だけで「輪」の抜けやすさを調節できるロタキサンを利用し、犠牲結合の切れやすさと材料の強靭性との関係を系統的に検証した。
その結果、ロタキサン架橋剤の基本骨格を変えることなく、軸の末端にあるストッパーの大きさや数を変えることで、力が加わった際の輪の抜けやすさを制御することに成功した。
加えて、末端構造を系統的に変えることで、分子レベルでの犠牲結合の切れやすさと、エラストマーの強度、伸び、壊れにくさなどの材料全体として現れる力学特性との関係が分かった。
また、材料本来の弾性をほぼ維持したまま、ごく少量のロタキサン架橋を導入するだけで、材料の壊れにくさを示す破断エネルギーを最大約20倍に向上させることに成功した。
今後は、同研究で得られた設計指針を基に、エラストマーのさらなる高機能化と用途拡大を進めることで、自動車材料や建築物の制振/耐震材料をはじめ、高い強靭性が求められる幅広い分野への展開が期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
数分で塗装でき、自浄効果を発揮する超撥水性の構造色塗装技術を開発
千葉大学は、数分で塗装が完了し、水だけでなく泥や埃なども弾く自浄効果を有した超撥水性の構造色塗装技術を開発した。微細構造に光が反射して発現する構造色は、高い発色性や耐久性から注目されている。
ペロブスカイトを用いた半導体を光学冷却させることに成功
千葉大学は、ハロゲン化金属ペロブスカイトを活用し、半導体を光で冷却させる半導体光学冷却の実証に成功した。光学冷却はオージェ再結合による限界があり、励起光強度に依存して冷却から加熱へと変化することが明らかになった。
光触媒により用途に応じた炭化水素をCO2から自在に生成できることを確認
千葉大学は、コバルト−酸化ジルコニウム光触媒への紫外可視光の照射により、二酸化炭素から飽和炭化水素(パラフィン)を、一酸化炭素からは不飽和炭化水素(オレフィン)をそれぞれ生成できることを確認した。
バイオマス生産量を1.8倍以上にする精密林業技術を開発
日本製紙、東京農工大学、千葉大学は、新エネルギー・産業技術総合開発機構のプロジェクトにおいて、植林木の単位面積あたりのバイオマス生産量を現行法の1.8倍以上に増やす精密林業技術を開発した。
プラの機能化に成功、使用後に肥料としてリサイクル可能に
千葉大学は、使用後に肥料としてリサイクルできる、高分子(プラスチック)の機能化に成功した。植物由来の糖を原料としており、安定性と分解性を兼ね備えたバイオエンシニアリングプラスチックとしての利用が期待される。
