くぎ刺しで燃えないハイニッケルリチウムイオン電池、容量はリン酸鉄の2倍超:組み込み開発ニュース
エリーパワーが正極材にハイニッケルを使用した定置用リチウムイオン電池「HYバッテリー Eシリーズ」を開発。くぎ刺し試験でも発煙、発火、破裂、熱暴走を起こさない高い安全性を確保しながら、ハイニッケル正極材の特徴である高容量/高エネルギー密度を両立した製品となる。
エリーパワーは2026年9月28日、正極材にハイニッケルを使用した定置用リチウムイオン電池「HYバッテリー Eシリーズ」を開発したと発表した。同社が手掛けるリン酸鉄リチウムを正極材に用いる定置用リチウムイオン電池と同様に、くぎ刺し試験でも発煙、発火、破裂、熱暴走を起こさない高い安全性を確保しながら、ハイニッケル正極材の特徴である高容量/高エネルギー密度を両立した製品となる。可搬型電源や機器組み込み用バックアップ電源をはじめ、データセンター向けの大型バックアップ電源、さらにはライトモビリティなど、幅広い分野での活用を見込む。
HYバッテリー Eシリーズは、エリーパワーとして初めて正極材にハイニッケルを採用したリチウムイオン電池である。同社の従来品であるリン酸鉄リチウムを正極材に用いる定置用リチウムイオン電池「HYバッテリー LシリーズVer.9」と比べて、エネルギー密度が2倍以上となる280Wh/kgを達成したという。
一方、高容量/高エネルギー密度のハイニッケルリチウムイオン電池は、エリーパワーの従来品であるリン酸鉄リチウムイオン電池と比べて熱安定性が課題とされてきた。HYバッテリー Eシリーズは、同社がこれまで培ってきた独自技術を活用することで、ハイニッケルリチウムイオン電池でありながら、くぎ刺し試験で発煙、発火、破裂、熱暴走を生じない高い安全性を実現したという。
エリーパワーは2006年の創業から安全性を重視した電池開発に取り組んでおり、これまでリン酸鉄リチウムイオン電池を製品展開してきた。リン酸鉄リチウムイオン電池は他の正極材を用いるリチウムイオン電池よりも安全性が高いことで知られているが、必ずしもくぎ刺し試験で発煙、発火、破裂、熱暴走を起こさないわけではない。しかし、同社はこれまで電池起因の事故ゼロを継続するなど、リチウムイオン電池が不安全事象に至るメカニズムを解明し、材料、電池構造、製造工程に至るまで、高いレベルで安全性を制御する設計ノウハウを培ってきた。
今回のHYバッテリー Eシリーズの開発は、この技術力を生かして高容量/高エネルギー密度化へのニーズに応えながら高い安全性も実現できる電池を開発したいという思いからスタートし、約4年にわたって研究開発を進めてきたという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
エリーパワーの“燃えない電池”がさらなる進化、不燃新型電池を2025年に量産へ
エリーパワーが、2018年11月に発表した不燃性イオン液体を用いた新型リチウムイオン電池の開発状況について説明。この「不燃新型電池」は、消防法の規制対象外となるため適用範囲は広がる他、エネルギー密度の向上も可能で、2025年の量産を目標としている。
パナソニック エナジーがハイニッケル正極材を実現した策と次のターゲットとは?
電気自動車(EV)へのシフトの加速と減速により激動の車載電池市場。その最前線で車載用リチウムイオン電池を展開するのがパナソニック エナジーだ。同社に、リチウムイオン電池の材料開発で苦労した点やその解決策、開発に注力しているEV向け高機能電池材料、開発におけるデジタル技術の活用、今後の展開について聞いた。
スズキが軽トラEVで農家と実証実験、電池はエリーパワーの定置用
スズキは軽トラック「キャリイ」をベースにしたEVを試作し、農家のユーザー向けに貸し出す実証実験を2025年度中に開始する。
スズキが“燃えない電池”のエリーパワーと業務提携、追加出資で筆頭株主に
エリーパワーとスズキは資本業務提携契約を締結した。蓄電システムや多様なモビリティに搭載可能なリチウムイオン電池を共同開発する。
重い鉛電池を置き換える、バイク始動用リチウム電池が一般販売
エリーパワーは、「第46回 東京モーターサイクルショー」(2019年3月22〜24日、東京ビッグサイト)に出展し、アフター市場向けに2019年4月15日から一般販売を開始する二輪車始動用リチウムイオン電池「HYバッテリー」を展示した。
バッテリーを載せないモトクロスマシン、ホンダがリチウムイオン電池を採用
エリーパワーは、ホンダ・レーシング(HRC)とテクニカルスポンサー契約を結び、2016年の「モトクロス世界選手権MXGPクラス」「全日本モトクロス選手権IA-1クラス」の参戦車両にリチウムイオン電池を供給する。同社のリチウムイオン電池の車載向け採用は初めて。バッテリー搭載が珍しいモトクロスのワークスマシンへの採用という意味でも興味深い。

