スズキが軽トラEVで農家と実証実験、電池はエリーパワーの定置用:電動化
スズキは軽トラック「キャリイ」をベースにしたEVを試作し、農家のユーザー向けに貸し出す実証実験を2025年度中に開始する。
スズキは2025年4月25日、軽トラック「キャリイ」をベースにしたEV(電気自動車)を試作し、農家のユーザー向けに貸し出す実証実験を2025年度中に開始すると発表した。対象地域は静岡県浜松市、静岡県湖西市、愛知県豊川市、熊本県阿蘇郡だ。
実証実験ではユーザーに軽トラックEVを1年間貸し出し、農業での軽トラックEVの使い勝手や、V2H(Vehicle to Home)による太陽光発電の活用を検証。軽トラックEVの潜在需要や、EVのバッテリーを活用した太陽光発電の自給自足の可能性を探る。実証実験には東京アールアンドデー、ピューズ、エリーパワー、ミクニ、Office F Visionが参加する。
農業での軽トラックは農地までの移動が主だ。作業中に動かすことが少なく、作業後は翌日まで宅内で駐車することが多いと仮説を立て、駐車時間の長さをEVとして活用することをコンセプトにした。駐車中はV2Hシステムと連携して蓄電池として使用する。
この使い方では軽トラックEVが1日に数回充放電するため、駆動用バッテリーにはエリーパワーが定置用で実績のある電池「HYバッテリーLシリーズ」を採用する。
EVのバッテリーは1日に何度も充電する使い方では急激に劣化するが、定置用の蓄電池は充放電の頻度が高いことを前提にしている。エリーパワーはフル充電を1万7000回繰り返しても70%の電池容量保持率を確保するなど、長寿命化や長期間の使用に耐える品質を重視してきた。
エリーパワーは累計10万5000台以上の定置用蓄電池を出荷する中で、全ての蓄電池でバッテリーに起因する火災事故を起こしていないとしている。ショートや過充電の他、押しつぶして内部短絡を起こしても熱暴走のリスクがないことを強みにしている。
また、エリーパワーはV2H蓄電システムとして「POWER iE Connect(パワーイエコネクト)」も実証実験に提供する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
2030年に向けたスズキの戦略
MONOistに掲載した主要な記事を、読みやすいPDF形式の電子ブックレットに再編集した「エンジニア電子ブックレット」。今回は、物流業務の自動化に関連したニュースをまとめた「2030年に向けたスズキの戦略」をお送りします。スズキが“燃えない電池”のエリーパワーと業務提携、追加出資で筆頭株主に
エリーパワーとスズキは資本業務提携契約を締結した。蓄電システムや多様なモビリティに搭載可能なリチウムイオン電池を共同開発する。スズキが2030年度までの新中計を発表、インドに設備投資1兆2000億円
スズキは2030年度を最終年度とする中期経営計画を発表した。現在は2025年度を最終年度とする中計が進行中だが、売上高や営業利益率などの目標値を2023年度に前倒しで達成したことから、新たな中計を策定した。スズキと「リン酸鉄系」リチウムイオン電池
今週は興味深いニュースがありました。スズキがリチウムイオン電池のメーカーと業務資本提携を結んだ件です。ホンダのモトクロス参戦車がリチウムイオン電池を始動用バッテリーにした理由
ハイブリッド車や電気自動車などをはじめ四輪車(以下、四輪)に広く搭載されるようになっているリチウムイオン電池。これからは二輪車(以下、二輪)向けにも普及していくかもしれない。ホンダが競技用車両に始動用バッテリーとしてリチウムイオン電池を採用。しかし、二輪の始動用バッテリーとして主流なのは、リチウムイオン電池よりも安価で安全性の高い鉛電池だ。リチウムイオン電池は課題を乗り越えて二輪を変えることができるのか。エリーパワーの“燃えない電池”がさらなる進化、不燃新型電池を2025年に量産へ
エリーパワーが、2018年11月に発表した不燃性イオン液体を用いた新型リチウムイオン電池の開発状況について説明。この「不燃新型電池」は、消防法の規制対象外となるため適用範囲は広がる他、エネルギー密度の向上も可能で、2025年の量産を目標としている。