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日本の製造業は「人件費が高い」は本当か? OECD33カ国で20位の現実:小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(51)(3/3 ページ)

ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は、日本の製造業の人件費について見ていきます。

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時給水準の購買力平価換算値

 国際比較する際に、為替レートでドル換算した数値は、為替変動の影響を受け、数値が乱高下します。国際的に見た時価のような数値と言えますが、必ずしも各国の生活実感を反映した比較とはなりません。

 そこで、各国の物価水準をそろえた上で、為替変動に影響されない、生活実感に近い数値となるのが購買力平価換算値です。連載の第27回でも紹介しましたね。

 購買力平価換算値は、空間的実質値といわれるように、各国の数量的(=実質的)な水準を比較する数値となります。つまり、その給与水準で購入することのできるモノやサービスの数量を比較するという観点です。

 各国の労働時間あたり雇用者報酬について、購買力平価換算した指標を確認しておきましょう。図5が、購買力平価換算をした労働時間あたり雇用者報酬推移の国際比較です。

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図5:購買力平価換算をした労働時間あたり雇用者報酬推移の国際比較[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成

 製造業の労働時間あたり雇用者報酬は、各国で上昇傾向となっています。数量的な賃金水準は各国で上昇していることになりますね。

 日本は米国よりも物価が安くなっていることもあり、為替レート換算値よりも数値が上昇しています。それは他の主要先進国も同様で、特にドイツでは非常に高い水準に達していることが確認できますね。日本の2倍以上の時給水準です。

 上昇はしているものの、国際比較で見ると残念ながら、日本の製造業の時給水準は主要先進国の中ではかなり低い状況と言えます。ただし、これは製造業に限った話ではなく、多くの産業で同様の傾向です。むしろ、産業別に見た場合、製造業はこれでも健闘している方なのです。

 最後に、より広い範囲で各国を比較することで確認してみましょう。図6は、OECD33カ国について、最新となる2024年の購買力平価換算された労働時間あたり雇用者報酬を比較したグラフとなります。

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図6:購買力平価換算をした2024年の労働時間あたり雇用者報酬のOECD33カ国比較[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成

 日本の製造業の労働時間あたり雇用者報酬は31.8ドルで、33か国中20位と低めの水準となっています。スロベニアやイスラエルに抜かれており、スロバキア、チェコなど東欧諸国ともほとんど差がなくなっています。

 ただし、全産業平均値(グラフの黒点の位置)で見ると、日本の立ち位置はスロバキアやニュージーランドを下回り、33カ国中22位とさらに下がります。製造業は全産業の中では健闘している方になるというのも認識しておきたいポイントです。

製造業の雇用者報酬の特徴

 この記事では、製造業における付加価値の分配のうち雇用者報酬について紹介してきました。

 以前の記事でもご紹介した通り、日本の製造業ではそもそも稼ぎ出す付加価値が少なく、投資規模に見合っていません。その結果、投資により蓄積された固定資産の維持費用がかさみ、労働者への分配が抑制的になっていることが統計データからも確認できたことになります。

 そのような事情も関係してか、1時間あたりの人件費で国際比較してみると、日本はかなり低い水準となっているのです。付加価値の一部が給与として分配されることを考えると、付加価値の拡大と給与の上昇が連動することになります。日本では実質賃金が低下しているという話が話題になりますが、まずは付加価値とその分配が増えていくことが必要になります。

 投資によって付加価値が増えるというよりも、投資が足かせとなって分配を圧迫しているという日本の状況は、これまで「良いモノを安くたくさん作って売る」という経済行動の結果といえるかもしれません。

 今後は、売り手も買い手も適正な価格による取引が重要とされますが、低すぎた対価を適正化することはもちろん、より価値の高いモノやサービスを生み出せる事業活動が重要となりそうです。

⇒記事のご感想はこちらから
⇒本連載「小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ」の目次はこちら
⇒前回連載の「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら

筆者紹介

小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役

 慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。

 医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。

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