リチウムイオン電池の常識を変える! 「局所的な反応」をナノレベルで可視化:研究開発の最前線
千葉工業大学は、リチウムイオン電池の複合電極で、局所的な電気化学反応をナノスケールでマッピングする手法を開発した。従来の平均値による評価ではなく、材料の配置や界面状態とそこで生じる局所反応を対応付けて評価できるようになった。
千葉工業大学は2026年8月27日、リチウムイオン電池の複合電極で、局所的な電気化学反応をナノスケールでマッピング(可視化)する手法を開発したと発表した。従来の平均値による評価ではなく、材料の配置や界面状態とそこで生じる局所反応を対応付けて評価可能になった。名古屋大学、東北大学、東京理科大学との共同研究による成果だ。
リチウムイオン電池の電極は、活物質や導電助剤、バインダーなど、複数の材料から構成される。電極内部の場所ごとに材料の種類や分布、界面状態が異なるため、電気化学反応は必ずしも均一ではない。
研究では、開口径約100nmのナノピペットを持つナノ電気化学セル顕微鏡(SECCM)を活用し、この反応が不均一である可能性を検討。シリコン、フレーク状グラファイト、導電助剤、PAAバインダーからなる複合負極を対象に、リチウムイオン電池で用いる有機電解液を使って局所測定を実施した。測定系をアルゴン雰囲気のグローブボックス内に構築すると同時に、ナノピペット内の電解液をゲル化し、微小な反応場を安定して形成することに成功した。
このSECCMでの測定により、場所ごとに異なる電気化学応答が得られた。この結果から、電極表面の局所反応をグラファイト、シリコン、両者の混合領域の3つに識別できることを示し、複合電極内部の反応不均一性を明らかにした。
また、負極表面の界面形成に関わる局所反応を解析したところ、SEI被膜の分布も局所的に検出された。電池の安定性や寿命を左右するSEI被膜の形成に関わる界面反応も、電極表面で一様に起こるのではなく、空間的に不均一に分布していることが分かった。
さらに7×7μmの領域を局所測定し、各地点の電気化学応答をマッピングした結果、複合電極上で活物質が分散して存在する様子を可視化できた。同じ領域でSEI形成に関連する反応をマッピングすると、その反応は複合電極の各所に不均一に分布していた。この結果は、従来の電気化学測定では見えなかった「局所組成−電気化学反応−界面形成」の関係を空間的に捉えられることを示している。
今回の成果は、蓄電池電極を平均的な材料として評価する考え方から前進し、局所電気化学計測から「どの場所で、どの材料が、どのような反応をしているのか」を読み解く新たな電池評価の考え方を示すものとなる。電極設計へ局所的な情報をフィードバックすることで、活物質や導電助剤、バインダーなどの配置や界面状態を最適化し、反応不均一性を制御する複合電極設計につながることが期待される。
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