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「材料が原因」は本当か?――家電筐体の落下破損を読み解くCAEで逆引きするトラブル診断の思考法(5)(3/3 ページ)

連載「CAEで逆引きするトラブル診断の思考法」では、身近な製品トラブルを起点に、「なぜ壊れたのか」を逆算して読み解くCAEの思考プロセスを解説する。第5回では、モデルチェンジ後に家電筐体の落下破損が増えたケースを想定し、材料だけでなく形状変更に目を向けながら、衝撃解析による原因究明の考え方を取り上げる。

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勘との対比:「材料だけを疑う」では足りない

 「コストダウンの材料が原因」という現場の勘は、間違いとはいえない。樹脂の耐衝撃性がグレードに大きく依存するのは事実であり、材料の確認は品質問題の基本動作である。疑うこと自体は正しい。

 問題は、材料だけを見て調査を終えてしまうことだ。材料試験で異常が出なかったとき、「原因不明」で調査が止まってしまうケースもある。CAEの視点を持っていれば、次に疑うべきものが見えてくる。設計変更の履歴と、破損の起点である。

 市場から戻った破損品の割れの起点をマッピングし、新旧形状の変更点と重ね合わせる。リブの付け根や終端部、ボスの根元、肉厚変更部、角部など、変更点と破損起点が一致するなら、材料ではなく形状が主因である可能性が高い。

 落下衝撃解析で新旧を比較すれば、その仮説は定量的に検証できる。勘が「材料」という容疑者を挙げ、CAEが「形状」というもう1人の容疑者を取り調べる。今回も、両者は対立せず、補い合う関係にある。

まとめ:変更点を疑う目を持つ

 家電筐体の落下破損から得られる教訓を整理する。

 第1に、落下は静解析の物差しだけでは十分に捉えられないということ。ミリ秒の時間スケールとエネルギー吸収という、静的強度とは別の物差しがいる。

 第2に、形が変われば壊れ方が変わるということ。同じ材料でも、リブや肉厚、ボスの配置が変われば、衝撃時の荷重経路と応力集中は別物になる。静的な剛性向上が、衝撃への強さを意味するとは限らない。

 第3に、材料だけに原因を求めず、変更点と破損起点を突き合わせること。設計変更履歴は、トラブル診断における有力な手掛かりである。

 カタログの材料物性や静的試験では見えない「衝撃の一瞬」を、CAEは可視化してくれる。

 次回はいよいよ最終回。踏み台、椅子、テーブル、自転車、家電筐体――5つの事例を横断して、「現場の勘」と「CAEの物差し」の対応関係を1枚のマップに整理する。トラブル診断の思考法の総まとめである。 (次回へ続く)

【ポイント】現場ではこう疑う――「家電筐体」編

 モデルチェンジ後に破損が増えたら、材料ロットの確認と並行して、設計変更点の一覧化を急ぐ。破損品の割れの起点がリブ付け根、リブ終端部、ボス根元、肉厚変更部に集中していないかを見る。

 静解析の安全率だけで落下時の強度を判断することはできない。新旧形状の落下衝撃解析の比較が、最短距離の検証手段になる。

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Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。mfabrica合同会社 社長。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わった他、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開。2016年に新たにmfabrica合同会社を設立し、3D CADやCAE、3Dプリンタ関連事業、製品開発、新規事業支援のサービスを積極的に推進している。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。


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