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折れる前に曲がる――テーブル脚の座屈という見落としCAEで逆引きするトラブル診断の思考法(3)(1/3 ページ)

連載「CAEで逆引きするトラブル診断の思考法」では、身近な製品トラブルを起点に、「なぜ壊れたのか」を逆算して読み解くCAEの思考プロセスを解説する。第3回では、テーブル脚の座屈を題材に、強度計算だけでは見落としやすい「安定性」の問題を考える。

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 前回は、椅子の疲労破壊を取り上げた。「1回座っただけでは何ともない」荷重が、何万回と立ち座りを繰り返すうちに、外観に何の異常も見せないまま、ある日突然破断する。そして最後に、「テーブル脚の座屈」を今回への宿題として残した。

 強度計算をする限り十分な余裕があるはずなのに、ある荷重を境に脚が「折れる前に曲がる」という現象が起きることがある。今回は、そのもう一つの破損モードを追っていく。

 疲労破壊では「時間(繰り返し回数)」が問題だったのに対し、座屈(buckling)は「1回の荷重」で突然起こり得る。このケースでも応力計算では、安全率がきちんと確保されている部材であるにもかかわらず、なぜそのようなことが起きるのか。今回も、現場の勘とCAEの結果を突き合わせながら考えてみたい。

⇒ 連載バックナンバーはこちら

本連載について:

本連載は、NITEおよび経済産業省が公表する事故/リコール情報を題材に、CAEの考え方と活用法を解説するものです。特定の製品や企業、業界を批判する意図はなく、本文中のCAE解析に関する記述(応力コンター図のイメージなど)は、一般的な製品構造を想定した筆者の考察であり、実際のリコール対象製品を解析した結果ではありません。


【事例紹介】「脚が倒れた」テーブルのリコール事例

 テーブルもまた、家具の中で事故やリコールの報告が決して少なくないカテゴリーだ。経済産業省のリコール情報を見ると、「脚の接合が外れた」「脚が変形した」「テーブルが倒れた」といった破損モードが登録されている。

 例えば、2020年11月、ある木製ダイニングテーブル(対象:約2200台)が「脚の接合が外れてテーブルが倒れる可能性がある」としてリコールされ、部品交換による対応が行われた。また、2019年9月には、折りたたみ式のアルミテーブル(対象:約1万6000台)が、持ち手部分の金具が外れる恐れがあるとして回収/交換の対象となった。NITEに通知された製品事故情報を見ても、アウトドア用の折りたたみテーブル/椅子に関する事故は一定数ある。

 これらの事例が、全て座屈によるものというわけではない。ただ、テーブルのトラブルでは、「天板そのものが割れた」という事故よりも、「脚まわりの変形/倒壊」や接合部の不具合が問題になることがある。テーブルは構造としては単純に見える。基本的には天板を脚で支えるだけだ。だが、その「脚で支える」という当たり前の部分にこそ、見落としが潜んでいる。

現場の勘:「強度は足りているはず」

 「テーブルの脚は何kgまで耐えられるか」――。この問いに、多くのエンジニアはまず脚に使われている材料の強度から計算するのではないだろうか。脚の断面積に対して、材料の許容応力を掛ければ、その脚が圧縮でつぶれるまでの荷重を求めることができる。天板に載るものの大きさ、場合によっては人が腰掛ける程度の荷重を見積もり、「安全率は十分。これで強度的には問題はない」と判断する。

 この計算は間違ってはいない。実際、脚が「圧縮で自ら潰れる(圧壊する)」ことは家具の使用で想定される荷重ではまず起こらない。木材も金属も、材料の圧縮強度はそれほど低いわけではないからだ。

 だが、ここに落とし穴がある。強度だけを見て「座屈(細長い部材が軸と直交する方向に逃げて曲がる現象)」を計算に入れていないのだ。計算上、強度は足りているはずだ。通常の強度解析を行っても間違っていないように思われる。それにもかかわらず、脚はそれよりずっと小さな荷重で、突然横方向に曲がって倒れることがある。

CAEアプローチ:なぜ「折れる前に曲がる」のか――思考プロセスを追う

 座屈は「強度」ではなく「安定性」の問題だ。

 座屈とは、細長い部材を軸方向に圧縮していったとき、ある荷重(座屈荷重)を境に、部材が急に横方向にたわみだす現象のことだ(図1)。

座屈のメカニズム──部材は「折れる」のではなく、ある荷重を境に「曲がる」
図1 座屈のメカニズム──部材は「折れる」のではなく、ある荷重を境に「曲がる」(概念図 ※筆者作成)[クリックで拡大]

 重要なのは、この現象が「材料が強度限界に達したから起きる」のではないということだ。材料の強度にはまだ余力がある。それでも真っすぐな状態を保つことができなくなり、横にたわんでしまう。これは、強度(Strength)の問題ではなく、安定性(Stability)の問題といえる。

 これを体感できる簡単な実験がある。少し長めの定規を両手で両端から押してみるとよい。定規の材料が潰れるよりもはるか手前で、定規はパッと弓なりに曲がってしまう。これが座屈だ。力を抜けば元の真っすぐな状態に戻るが、もしテーブルの脚で同じことが起これば、天板は傾き、天板の上のものは滑り落ちる。脚の接合部には設計で想定しない曲げ荷重が一気にかかる。「折れた」のではなく、「曲がった」結果としてテーブルは倒れたり、破損したりすることになる。

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