続・量産プロセスで、完璧な量産(組み立て)と検査ができない理由:製品リコールを生む品質不良の原因と対策(7)(2/2 ページ)
設計品質と量産品質の構造を整理し、品質不良が生まれるメカニズムを体系的に考察する連載「製品リコールを生む品質不良の原因と対策」。第7回では、人間による組み立て作業や検査の限界を具体例から示すとともに、製造性に問題がある場合、設計と製造のどちらで対応すべきかを解説する。
ビスの取り付け順(組み立て作業順を間違えやすい、検査はできない)
組み立て順にミスが生じやすく、また、その検査ができない例として、ビス留め作業がある。
ビスを留める順番が違っても、製品の組み上がりに変わりはないと思う人がいるかもしれないが、厳密には同じになるとは限らない。その理由は、ビスの直径とビス穴(タップのない穴)の間には、微小なガタがあるからだ。
例えば、図4の板金をある部品にビス2本で固定する場合、左→右の順でビスを留める場合と、右→左の順で留める場合とでは、板金の位置が若干異なる。目視検査では、ビス留め順も位置ずれも判断できない。試作セットの試験はどちらかの留め順で組み立てているため、試作セットと量産品とでビスの留め順が異なれば、厳密に言えば量産品と同等品で試験をしていなかったことになる。
しかしながら、ビスの留め順について設計で対応するとしても、図4のようにビス留め順の番号を刻印する程度であり、作業者によっては間違える可能性が残る。
このような場合は、現在ではカメラによって作業を常時監視する方法もある。図5のように、カメラ映像から作業者の骨格を推定して動きを認識し、作業者が間違った順番で作業するとシステムがアラームを発する。
以上のように、人間の作業や検査の能力には限界があるので、それを理解した上で生産設備を構築する必要がある。これらの問題は、量産前の試作セットを数台組み立てるときに見つけなければならない。しかし、試作では時間をかけて丁寧に組み立てるため、見つけられない場合もある。こうした問題を試作段階で見つけられなかったことは、設計者や組立メーカーの製造技術者に、製造性を見極めるためのスキルが不足していたことを示している。
設計/製造の対応判断を間違う
ここからは、「製造性対応方法の判断力が低い」の項目になる。
ここでいう製造性とは、製品を正しく組み立てやすいことだ。例えば、図6のように逆さまでも取り付いてしまう部品があったとする。まずは、逆さまには取り付けられないように設計する必要がある。しかし、そのような形状にするのが困難であったり、大幅に部品コストがアップしたりして設計で対応できない場合は、量産プロセスの製造技術(組み立て方法)で逆さまに取り付かないようにするしかない。
対応方法としては、まず作業標準書にL字金具の方向性を図示し、工程内検査を行うことが必須だ。さらに、作業者がL字金具を指でつかむときに常に一定方向でしかつかめないようにしたり、治具を用いて逆さまに取り付かないようにしたりする。
設計で対応すると部品コストがアップし、製造技術で対応すると設備の準備や治具費用が発生する。本来は、これらのコストを比較して対応方法を決めるのがよいが、いずれの対応方法でも多額のコストがかからないのであれば、以下の順番で対応するのが適切である。作業標準書への記載と工程内検査は必須だ。
(1)設計で対応:設計変更
(2)組み立て方法で対応:一定方向でしかつかめないようにする/治具を用いる
上記の(1)(2)のどちらで対応するかは、いつも設計メーカーと組立メーカーでもめるところだ。設計者もしくは製造技術者の仕事が増えるからである。
もし、中国などの海外や、外国人労働者の多い日本の組立メーカーで組み立てる場合は、(1)が基本であり、どのように作業しても逆さまに取り付かないようにすることだ。こうした製造現場では、作業者の自己判断や入れ替わりなどによって、作業方法が変化する可能性も考慮する必要がある。
特に問題が起きやすいのは、日本で量産していた製品を中国に移管する場合だ。日本では、作業標準書と工程内検査だけの対応で問題は起こらなかったのに、そのままの工程と作業内容で中国に製造移管すると、問題が生じることがある。連載第6回の「作業標準書通りに作業しない」を参照してほしい。
設計と量産を委託するODM(設計製造委託)の場合でも、問題は起きやすい。委託する企業は、まず絶対に逆さまに取り付かない(1)の方法で対応してほしいと依頼する。しかし、ODMメーカーは設計変更や金型変更に費用が発生するため、これを断る。では、(2)の治具で対応してほしいと依頼しても、費用が発生すると再び断り、作業標準書と工程内検査で十分だと主張する。契約でODM費用があらかじめ決まっている場合は、このようになりやすい。
しかし、このような場合は、委託する企業が設計変更を必要と判断すれば、断固として要求すべきである。もし不良品が市場に流出すれば、その対処費用が上記(1)(2)の対応費用を上回ることも多く、委託する企業がその費用を負担する場合もあるからだ。 (次回へ続く)
筆者プロフィール
オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)
上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。
◆ロジカル・エンジニアリング Webサイト ⇒ https://roji.global/
◆著書
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