半導体市場は過剰在庫から一転し受注が倍に、独自データで読み解く市場の行方:製造マネジメントニュース
生成AI需要で半導体市場は急伸している。コアスタッフは、市場の最新動向と今後の見通しを読み解く記者説明会を開催した。
半導体/電子部品商社のコアスタッフは7月29日、東京都豊島区で半導体市場の最新動向と今後の見通しを読み解く記者説明会を開催した。
同社が取り扱う約8万点の在庫の販売/受注データを基に算出した独自指数「CEDI(コアスタッフ電子部品需要指数)」などを交えて市場を分析した。生成AI(人工知能)を中心とした需要拡大を背景に半導体関連市場が急回復する中、消費者の調達構造の変化や、新たなサプライチェーンの懸念事項について説明した。
半導体市場は2025年を起点にV字回復、AI需要がけん引
日本国内の半導体/電子部品の受注状況は、コロナ禍における工場停止の反動で一時は爆発的な需要を記録したものの、2022年から2023年頃にかけては過剰在庫により長らく低迷期が続いていた。しかし、2024年3月を底に回復傾向へと転じ、2025年12月を転換点として再び急上昇を始めている。
コアスタッフ 代表取締役社長の戸澤正紀氏は、「2025年を境に、多くの企業で抱えていた過剰在庫の消化が進んだと見ている。2026年現在は1年前と比較して市況が全く変わり、およそ倍のレベル感で動いている」と指摘する。
特に顕著なのが部品カテゴリー別の動きだ。AIサーバやデータセンター向けの需要がけん引し、半導体のみならずMLCC(積層セラミックコンデンサー)をはじめとする受動部品の受注が急伸しているという。「直近1カ月ほどで急激にオーダーが膨らんでおり、メーカーの供給キャパシティーが追い付かないという供給不足の懸念も出始めている状況だ」と戸澤氏は説明する。
「価格第一」から「入手第一」へ、調達マインドの変化
日々の顧客動向からも、企業の購買マインドに変化が起きていることが明らかになった。
「かつて日本企業は製造業などの高い競争力を背景に『価格第一』の調達をグローバルで行ってきた。しかし、地政学リスクやパンデミックによる供給網の寸断を経て、現在は『入手第一』へと優先順位が完全に逆転している。いかにバッファー在庫を持ち、安定供給を担保できるかが勝負になっている」(戸澤氏)
企業にとって、単なる部品の安さよりも「必要な時に必要な部品が確実に手に入ること」が、自社のコア業務や付加価値向上にリソースを割くための最重要課題として、シビアに見極められるようになっているという。
こうした調達環境の変化は、プレイヤーの勢力図にも影響を与えている。これまで日本の顧客企業は、品質や信頼性の面から欧米や日本のメーカー製部品を好む傾向が強かった。しかし昨今では、深刻な部品不足や価格高騰という状況に直面している。
その結果、中堅企業などを中心に、十分な供給能力と価格競争力を持つ中国メーカー製部品の採用を本格的に検討し、実際に切り替える動きも出始めているという。戸澤氏は、「実需を満たし開発を止めないために、より現実的で実利を優先した調達へと、日本の顧客も適応を迫られている」と語った。
AI需要は揺り戻しに注意しつつ、安定供給網の構築が急務
今後の市場展望について、戸澤氏ははデータセンター向けGPUやHBMなどのAI関連が向こう1年間は市場を強力にけん引すると予測する。FA(Factory Automation)分野も、フィジカルAIへの注力や物流自動化などを背景に安定した回復を見せており、この傾向は2〜3年継続すると見込む。
一方で、一般産業機器市場は実需に見合ったオーダーへ移行しつつあるものの、企業によって明暗が分かれるとして慎重な見方を示した。戸澤氏は、「AI需要は非常に好調だが、過剰投資による急減リスクも潜んでいる」と指摘し、需給が乱高下しやすい市場環境への備えが必要だと語る。
そうした中、コアスタッフが顧客の新たな調達インフラとして提示するのが、2024年8月に総工費約50億円を投じて新設した物流/解析センター「Zero Hub」(長野県佐久市)だ。Zero Hubは施設全体で100万点(うち自動倉庫で10万点)の保管能力を有し、半導体の長期保管に不可欠な全館空調を完備。技術解析に対応する専門スタッフ常駐の解析センターも併設している。
戸澤氏は「市場の急回復に伴い、現在の出荷件数は1年前と比較して約2倍に達している。4階吹き抜けの自動倉庫によるピッキングの効率化がなければ、今の爆発的なオーダーにどう対応できていたか分からない」と語った。
企業は、自社で過剰な在庫リスクや保管コストを抱え込むのではなく、こうした外部拠点を自社のインフラとして活用すべきだという。それにより調達業務の負担を減らし、浮いたリソースを製品開発などのコア業務へ集中させる。市場の変化に適応し、柔軟なサプライチェーンをいかに再構築できるかが、再び訪れた市場拡大期を勝ち抜くかぎになるとの見方を示した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
外観検査で変色や酸化が疑われる電子部品のはんだ付け試験サービス
コアスタッフは、「電子部品はんだ付け試験サービス」の提供を開始した。外観検査で変色や酸化が疑われる電子部品を対象に、専門スタッフが実際にはんだ付け試験を実施し、はんだのぬれ性を評価、判定する。
半導体物流の2024年問題を解決へ、コアスタッフは「調達と物流のTSMC」を目指す
コアスタッフは、2024年秋に稼働予定の新物流センター(長野県佐久市)の建設状況や、半導体業界における物流2024年問題、新物流センターを活用した物流2024年問題に対応する同社の新サービスについて説明した。
不足から一転して過剰在庫に悩む半導体市場、最悪シナリオでは回復は2026年?
コアスタッフは、半導体/電子部品市場の現状と今後の展望について説明会を開催した。
半導体不足の裏で大奮闘、語られざる半導体商社の仕事を知る
半導体不足などのニュースで、半導体の流通に携わる「半導体商社」にスポットライトが当たる機会はあまりない。半導体の流通業務に携わる商社の立場から見て、昨今の半導体不足はどのように見えていたのか。そもそも半導体商社はどのような仕事をしているのか。コアスタッフ代表取締役に話を聞いた。
ルネサスが2035年の売上高3倍増も視野に、AIで3段階の成長を目指す
ルネサス エレクトロニクスが同社の概況や事業方針などについて説明。足元で半導体市場の拡大をけん引するAIに焦点を当てた事業展開を強化し、AIインフラ、フィジカルAIとSDV、「Intelligence at the Edge」の3段階で優位なポジションを構築し成長を目指す。
2035年のパワー半導体市場は7兆3495億円に倍増、酸化ガリウムが149億円規模に
富士経済は、パワー半導体の世界市場調査結果を発表した。2035年の市場規模は2025年比95.7%増の7兆3495億円に達する予測だ。次世代製品の実用化が市場をけん引する。






